「ワイルド広告」でネットメディアの可能性を自ら広げる--ヤフーの挑戦

岡田靖 怒賀新也 (編集部)

2013-04-11 07:00

ウェブ特有の挑戦的な広告を自社で仕掛けて事例に

 日本最大級のポータルサイトであるYahoo! JAPANは、ウェブ広告の媒体としても大きな存在感を示す。最近、そのYahoo! JAPANのトップで、2020年東京五輪招致活動の広告を目にした方がいるかもしれない。

 検索ボタンのすぐ下、右側カラム最上位の広告スペースに鉄棒が表示され、マウス操作で体操選手がぐるぐると回転し、鉄棒から手を離して上に飛び上がると、そのまま広告枠の画面から飛び出してしまう。するとトップページ全体が下にスクロールし、上から出てきた舞台へ選手が着地する――といった内容だ。

オリンピック選手が鉄棒でぐるぐる回転 オリンピック選手が鉄棒でぐるぐる回転
※クリックすると拡大画像が見られます

 斬新な広告の舞台裏、ヤフーの考えるウェブ広告の将来像について、立役者であるヤフーのマーケティングソリューションカンパニー、マーケティングイノベーション室の友澤大輔室長に聞いた。

鉄棒から手を離し、空中で体をひねる選手。この瞬間、Yahoo! JAPANのロゴの上の面がグーンと伸びた
鉄棒から手を離し、空中で体をひねる選手。この瞬間、Yahoo! JAPANのロゴの上の面がグーンと伸びた

 マーケティングイノベーション室とはどのような仕事を手掛ける部署なのか。友澤氏は「簡潔な表現をすると、ヤフーの『宣伝部』のような存在」と説明する。

 具体的には大きく2つの役割があり、1つがYahoo! JAPANのさまざまなサービスの宣伝を支援する業務。広告主としての立場でさまざまな媒体やエージェンシー(広告代理店)と付き合いがあるという。2つ目は、新しい広告の事例を作っていくことだ。Yahoo! JAPANのサービスは100以上あり非常に多彩だ。新たな広告手法の事例を出せば、それが必ずどこかのクライアントのニーズにマッチするという。

 「ひいては日本のマーケティングの世界に新しいものをもたらすことができる」(友澤氏)

 その新しい広告の事例の1つが、冒頭に紹介したオリンピック招致広告というわけだ。実は、体操選手の着地点からリンクされている「ランディング」ページは五輪招致の「公約集」だ。

 スポーツ選手やタレントなどが「五輪招致に成功したら○○します」という公約の数々を見ることができるが、その中にはヤフー社長の宮坂学氏も顔出しで公約を掲げている。つまり、自社が絡んだ広告だったというわけだ。

着地すると「2020年、オリンピック・パラリンピックを東京で」という大きなロゴが出現した 着地すると「2020年、オリンピック・パラリンピックを東京で」という大きなロゴが出現した

「ワイルド広告」と呼ぶ新たな手法への挑戦

 「このような挑戦的な広告をわれわれは“ワイルド広告”と呼んでいる」(友澤氏)

 広告主にしてみると冒険が過ぎてなかなか打てないようなものを、ヤフー自身が実験的に手掛ける意味合いがある。もちろん積極的に新しい広告手法を求めるようなクライアントもいるが決して多くはない。同業他社が新たな広告手法に挑戦しても、それに同調するというよりは、ライバルに似た手法を避ける心理が出てくる。

 挑戦的な体裁の広告をヤフーが自社広告として手掛け、新しい取り組みにあまり積極的でないクライアントにも前例を作って見せるのは、Yahoo! JAPANという大手媒体の中で自社広告を手掛ける『宣伝部』ならではの仕事と言えそうだ。

 「媒体が新しいことをやれば、クライアントとしても乗りやすい傾向があります」と同氏。実例があれば社内の稟議も格段に通りやすくなる。

 また、Yahoo! JAPAN内でやっているからこそできることもある。例えば、Yahoo! JAPANトップページ担当者に企画の最初から関わってもらい、いろいろなクリエイティブに適合するよう制作物を作り込んだりしている。

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