本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、富士通の佐相秀幸 代表取締役副社長と米IBMのBob Piccianoゼネラルマネジャーの発言を紹介する。
「技術や商品を新たに体系化することでイノベーションにつながる領域にビジネスを広げていきたい」 (富士通 佐相秀幸 代表取締役副社長)
富士通が4月10日、全社ビジョンとして掲げる「ヒューマンセントリック・インテリジェントソサエティ」を基軸に、ビジネスや社会のイノベーション・コンセプト、その実現に向けた技術や商品のコンセプト、および対応する商品群を「Fujitsu Technology and Service Vision」として体系化したと発表した。
富士通の佐相秀幸 代表取締役副社長
副社長でマーケティング部門長を務める佐相氏の冒頭の発言は、その発表会見で、今回の新ビジョンに向けた思いを語ったものである。
同社では技術や商品の新たな体系化に向け、まずヒューマンセントリック・インテリジェントソサエティの実現に向けて顧客や社会とともに実行していく「人」「情報」「ICT」に対応するアクションを、「人が活動する場でのイノベーション実現」「ビジネス・社会を情報装備」「End-to-Endで全体最適化」の3つに整理した。
そして、ヒューマンセントリック・インテリジェントソサエティの実現に向けたビジネスと社会のイノベーションの姿として、高度な情報利用が人々の活動に変革をもたらす6つのコンセプトと、それぞれの先行事例を明示した。
6つのコンセプトとは、「フィジカル+デジタルのビジネスモデル」「情報が結びつける世界」「コンピューティングのもたらす新たな力」「リアルタイムの対応」「人のつながりと協働」「インテリジェントな社会基盤」からなる。
その上で、先述の3つのアクションを具体的に実行するために、同社が中期的に開発・提供していく技術や商品を8つのICTバリューとして体系化した。
具体的には、「人が活動する場でのイノベーション実現」では「インテグレーションによる価値創造」「オンデマンド・エブリシング」「モビリティとエンパワーメント」、「ビジネス・社会を情報装備」では「情報からの新たな価値」「セキュリティとガバナンス」、「End-to-Endで全体最適化」では「モダナイゼーションからイノベーションへ」「統合されたコンピューティング」「ネットワーク・ワイドな最適化」といったものである。
実は、こうしたビジョン策定の取り組みは同社が競合するIBMやHPなどで先行している。その理由は、グローバル企業として経営理念や行動指針にとどまらず、こうした技術や商品におけるバリューや今後の方向性における共通認識がこれまでにも増して大事になってくるからだ。その意味では、真のグローバル企業に向けてこうしたメッセージを発信していくことは、富士通にとって非常に重要だろう。