本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、日本マイクロソフトの加治佐俊一 最高技術責任者と、日本IBMの波多野敦 事業部長の発言を紹介する。
「今回のWindows Azureの機能拡張で、当社のクラウドサービスは全ての領域をカバーする形になった」
(日本マイクロソフト 加治佐俊一 最高技術責任者)
日本マイクロソフトが4月17日、PaaS型のパブリッククラウドサービス「Microsoft Windows Azure」においてIaaS型の「インフラストラクチャサービス」を正式に提供開始したと発表した。同社ではすでに「Office 365」をはじめとしたSaaS型サービスも展開していることから、クラウドサービスの全ての領域をカバーする形になった。加治佐氏の発表会見での冒頭の発言は、その点を強調したものである。
日本マイクロソフト最高技術責任者の加治佐俊一
同社では2012年6月からインフラストラクチャサービスをプレビュー版として提供してきたが、このたび正式な運用を開始した格好だ。同サービスによって、IaaS機能の「仮想マシン」、およびWindows Azureと企業のオンプレミス環境などを接続するVPN機能の「仮想ネットワーク」を利用できるようになる。
さらに詳しい発表内容については、すでに報道されているので関連記事をご覧いただくとして、ここでは筆者がかねて注目してきたWindows Azureのユニークな協業形態と今回の動きの関連について取り上げておきたい。
ユニークな協業形態とは、米MicrosoftがWindows Azureにおいて富士通、米HP、米Dellと戦略的提携を結び、同PaaSを運用できるシステム基盤を開発するとともに、3社のデータセンターからそのシステムを活用したクラウドサービスを提供できるようにしていることだ。Microsoftにすれば、Windows Azureサービスの運営そのものを委託する格好で、これは取りも直さず、クラウドサービスにおけるデータの在り方を根本から変えるものともいえる。
Microsoftが3社と戦略的提携を結んだのは、Windows Azureの実行環境として同社が提供するアプライアンスを組み込む形になるPCサーバのグローバルシェアにおいて、上位を競うのがこの3社だからだ。さらに、3社とも自社のデータセンターのグローバル展開に注力している。その展開力が、MicrosoftにとってはWindows Azureを普及させる上で必要になると見ているようだ。
その中でも、MicrosoftはHPやDellに先行して、富士通との協業サービス展開を2011年6月に発表。両社の緊密ぶりが目立っている。ちなみに富士通の国内データセンターから提供されているWindows Azureを採用したクラウドサービス「Fujitsu Global Cloud Platform FGCP/A5 Powered by Windows Azure」(FGCP/A5)には、すでに多くの顧客企業が名を連ねている。