1000億ドルを超えるAppleの海外滞留金
今回の社債発行で調達した資金の使途は自社株の買い戻し。Appleは4月23日(米国時間)の決算発表の中で「自社株の買い戻しにあてる金額を、従来の5億ドルから、一気に60億ドルまで引き上げる」「2015年までに総額1000億ドルを株価対策(株式配当支払いと自社株買い戻し)にあてる」などといった計画を発表していた。
[Apple Raises $17B in Largest Corporate Bond Sale - Bloomberg West]
Appleの3月末の現金残高(cash and equivalents)は約1450億ドルで、このうち3分の2にあたる約1000億ドルが米国外に置かれている。「推定92億ドルの節税」というのは、仮にこの海外滞留資金1000億ドルのなかから170億ドルの資金を捻出しようとすると、資金を米国内に持ち込む際に35%の法人税(Repatriation Tax)が掛かるため、必要となる金額はあわせて約260億ドルになってしまうという試算によるもの(註5)。この90億ドルという数字の規模感をどう伝えていいかは迷うところだが、「Appleの1-3月期の純利益が約95億ドルだった」(註6)とか、「このところ少し株価が持ち直しているBlackberryをそっくり買ってもまだおつりが来る」(註7)などいくつか比較の対象も浮かんでくる(註8)
なおこの社債発行について、TUAWでは「1株447ドル(5月2日時点)に1.85%の金利をかけると約8ドル26セント」で、この経費扱いできる(課税対象にならない)8ドル強のコストで「税金の掛かる配当金年間12ドル20セント(3ドル05セントx4回)を節約できる計算」になるなどと指摘している(註9)。
またQUARTZでは、「Appleの社債発行は、同社経営陣が米国議会による法人税の大幅な改革が近いうちには実現しないと見込んでいることの表れ」などとした上で、公表した総額600億ドルの株式買い戻しを実施するために「Appleは2015年までに毎年150億~200億ドルを(社債発行で)借り入れることになる」と記している。これは米連邦議会で下院を押さえる共和党側が、オバマ政権や民主党側が求める連邦政府の借入額上限の引き上げに絡める形で、法人税の大幅改訂(税率の引き下げ、控除項目の簡素化など)を交渉の俎上に載せようとしている、といった流れがあるためらしい(註10)。連邦政府の債務=借り入れ額上限引き上げ問題については現行の暫定措置が9月末に期限切れを迎えるため、場合によっては昨年末から年明けや3月初めにあったドタバタが、夏の終わりから秋口にかけて再び繰り返される可能性もあるという(註11)。