25番目の業界、スポーツ&エンターテイメント業界向けソリューション
McDermott氏は後半、コンシューマー向けの取り組みについて語った。SAPは25番目の業界として「スポーツ&エンターテインメント」に参入し、スポーツチームやスポーツ関連企業に向けたソリューションを提供することを正式発表している。
基調講演では米プロバスケットボール協会(NBA)、アメフトチームSan Francisco 49ers、それにスポーツウェアのUnder Armourのトップが登場し、HANAなどSAP技術を利用した取り組みを語った。
「試合をその場で観戦しているファンは1%程度。多くのファンはスマートフォンやタブレットでアクセスしている」(NBAの次期コミッショナーAdam Silver氏)というように、ファンのスポーツイベント体験に技術は不可欠なものになりつつある。HANAは非構造化データにも対応しており、ソーシャルメディアのデータを分析することでファンの感情も分析できる。
49ersはスタジアムに来たファンの体験をさらに改善するため、カリフォルニア州サンタクララに新しいスタジアムを建設中だ。SAPは設立パートナーとして参加しており、SAPのビックデータ分析、モバイル、リアルタイムシステムなどを提供する。ファンのニーズは一様ではなく、ソフトウェアを利用してそれに答える、と49ersのCEO、Jed York氏。チケットレス、席に着いたまま食事や飲み物の注文など、SAP技術を利用して顧客ごとに適切な体験を提供すると期待を寄せた。「ハードウェアは数年すると古くなる。柔軟なソフトウェアが大切だ」(York氏)。
ファンに対してだけではなく、学生選手のスカウトにもデータ分析技術を利用する。SAPが3月に発表した「SAP Scouting」ソリューションは、データに基づく候補者の評価を支援するものだ。49ersのYork氏は、スカウトに加え、試合の間に何が起こっているのかなどを分析することで、ゲームマネジメント手法の開発に役立てているという。「最高のプレーヤーを求めているのではない。チームにとって最高のプレーヤーを求めている」とYork氏は述べる。
Under Armourは1996年に創業、急速に成長し2005年に公開企業になった。IPOと同時期にSAPのERPを実装し、業務の効率化とイノベーションを進めたという。Under Armourの創業者兼CEO、Kevin Plank氏は、成長過程にあった2005年の時点で自社に何ができるかわからなかったが「成長できるシステム」を求めていたと説明。当時少なかった女性の顧客比率は現在半分近くを占めるなど状況は変化しており、SAPのシステムは変化を支えている。そして、先に発表したフィットネスバンド「Armour 39」では、データ分析をバックオフィスから製品に拡大した。着ている人の動きを測定、追跡、分析することでエクササイズのパフォーマンス改善を支援するものだ。「将来はウェアラブル技術」とPlank氏は述べた。
右からUnder ArmourのCEO、Kevin Plank氏、San Francisco 49ersのCEO、Jed York氏、NBAの次期コミッショナーAdam Silver氏、SAP共同CEOのBill McDermott氏、スポーツキャスターのJames Brown氏
SAPは2015年に10億人のコンシューマーにリーチするという目標を掲げており、スポーツ向けソリューションの展開はこれに向けたものとなる。「SAPはBtoBtoCのソフトウェア市場のリーダーだ」(McDermott氏)。それにあたり、ユーザー体験を最優先課題に掲げているという。
コンシューマーは人数にして30億人という巨大な市場だが、McDermott氏は「個々の顧客とパーソナライズされた関係を構築できる。HANAを利用して何を求めているのかを高速分析し、瞬時に提供できる」と述べ、HANAベースの顧客関係ソリューション「SAP 360 Customer」やモバイルを利用して、いつでもどこでもリーチできるとした。