SAPジャパンは5月30日、予測分析ソフトウェアの「SAP Predictive Analysis」を提供開始すると発表した。膨大なデータを分析することで、将来起きうることを予測、危機に対する迅速な対応、問題発生の防止を図る。企業を取り巻く環境の変動が高速化する中、できるだけ迅速に最適な行動を取り、情報爆発の時代に対応していくためのソリューションと位置付けている。
Predictive Analysisは、多様なソースからデータを取得、加工し、結果を視覚化することが可能で、さまざまなデータの関係を数値化したり、新たな関係性を見出す。直感的に使用できるユーザーインターフェースを備え、操作性を大きく向上させていることが大きな特徴で、データマイニングへの門戸をビジネスユーザー向けにも開放することを目指す。
この製品の柱である高度な分析機能は、大量のデータからルールやパターンなどを自動的に検出、それらをもとに将来予測し、ビジネス上での行動へと迅速に結び付けることができる。オープンソースの統計解析言語「R」を利用でき、大量のデータ分析を効率的に処理するためのインメモリデータマイニング機能や広範な予測分析アルゴリズムが準備されており、「R」の使用はコーディングなしでも可能となる。
今回の製品は単独での導入も可能だが、インメモリデータベース「SAP HANA」など、ほかSAPソフトウェアと連携することで、その効力をさらに高くすることができる。たとえば、HANAと連動させれば、大量データの高速な予測分析が可能になる。
HANAの予測分析ライブラリを活用することで、データ範囲の拡大、モデルスコアリングを向上させることも可能だ。分析結果を予測モデル記述言語の業界標準である「PMML(Predictive Model Markup Language)」としてエクスポートするため、ほかのデータマイニングツールとの連携も可能だ。
同社によれば、HANAとの連携による適用範囲は広範になるとして、以下の例を挙げた。製造業の場合、1秒間に数千のイベントが発生する大量のセンサ情報を活用した設備や機器、車両の異常監視、その異常の予兆を生かした予防保守が可能となる。
ヘルスケア業界では、数千万人の患者データ、診察や投薬の履歴から疾病発生のパターンを捉え、疾病発生予備軍を抽出し、発症前に予防的なケアを実行できる。小売業の例では、店舗で買い物をしている顧客行動をとらえ、レジに向かうまでの間に最適なオススメ商品を顧客のモバイル端末に届けることができるようになる。
SAPジャパン バイスプレジデント ビジネスソリューション統括本部長 堀田徹哉氏
SAPジャパン ビジネスソリューション統括本部 アナリティクスソリューション本部 シニアソリューションプリンシパル 瀬尾直仁氏
同社は、HANAとビジネスインテリジェンス(BI)ツール「SAP BusinessObjects」、今回のPredictive Analysisをパッケージ化した「SAP HANA Insight」も投入する予定だ。SAPジャパン バイスプレジデント ビジネスソリューション統括本部長の堀田徹哉氏は「この新製品は、『HANA』との融合、統合でさらに付加価値を創り出せる」と話す。
Predictive Analysisのもう一つの特徴は「既存のデータ、環境を使用した、スモールスタートが可能になる」(同社 ビジネスソリューション統括本部 アナリティクスソリューション本部 シニアソリューションプリンシパル 瀬尾直仁氏)ことだ。
瀬尾氏は「現在の環境で用いられている、数々のデータベースや表計算ソフトなどをベースに、スモールスタートから着手し、段階的な導入をしていくこともできる」としており、この分野での伸長に意欲を示した。
国内での販売戦略については、この製品が持つ「さまざまな知見やアルゴリズムをテンプレート化し、実装できる機能」(瀬尾氏)を活かし、パートナーとのエコシステムを構築していくという。瀬尾氏は「パートナーの得意分野やデータサイエンティストのノウハウを、固有の機能として取り込むことができる。そのような施策を通じ、予見分析の領域を身近なものと感じてもらうことで拡販につなげたい。
この種のソリューションは従来、大手企業が需要の中心だったが、エコシステムを介し、中堅中小企業にも利用しやすいようにしていきたい」と語った。データサイエンティストの裾野拡大にも重点を置く考えで、人材育成にも注力していく意向だ。