Salesforce.comが提供するPaas(Platform as a Service)である「Force.com」上で独立系ソフトウェアベンダー(ISV)が開発するアプリケーションが増えている。少し前に「エコポイント」の申請システムのURLに「force.com」という文字が含まれていたことに気づいたかもしれない。Force.comの仕組みで構築されたアプリケーション数は、2008年半ばに800程度だったが、この6月の時点で1800を超えたとのこと。ユーザー数の増加を裏付けるインストール数は、同期間で30倍の規模になった。
テラスカイの社長、佐藤秀哉氏。Salesforce.comが認定する「Sales Cloud Consultant」などさまざまな分野で合格者数が1位であることを強調した
Force.comによるクラウドベースのシステム構築分野で、国内で最大規模の実績を持っているシステムインテグレーターがテラスカイだ。売り上げの8割がクラウドシステムの構築である一方、残り2割は自社で開発したシステム間連携ソフトウェアなどで構成する。
企業システムが徐々にクラウド化していく中で、システムインテグレーターが成功するためには何をするべきか。テラスカイの社長、佐藤秀哉氏に話を聞いた。
――企業システムをクラウドで構築する流れがここ数年で急速に強くなりました。こうした動きについて、どのように考えていますか。
クライアントサーバ(C/S)型から今の「クラウドファースト」への動きは、かつてのオフコンからC/Sへのパラダイムシフトが起きた時と状況が似ています。
欧米を見ると、ほぼクラウド周りのテクノロジにしか投資していません。スマートデバイス、ビッグデータの活用にしても、クラウドが前提になっている。15年前にC/Sが全盛だったころ、その周りの技術が進化しました。ハブやルータが高速になったり、イーサネットもどんどん高速化しました。その意味で、クラウドを選択しておくと、技術のトレンドに沿うという意味でも外れがないでしょう。
当時、オフコンのパッケージソフトがC/Sに移行しました。そして今、C/Sのパッケージがクラウドに移ろうとしています。例えば、ワークスアプリケーションズのパッケージがAWS(Amazon Web Services)で稼働したり、グロービアのアプリケーションがForce.comで稼働したりするようになりました。グロービアについては、われわれが4月に発表した「クラウドERPコンシェルジュサービス」でもラインアップに含めています。
――クラウド上で基幹システムを稼働させる上で、いわゆる「99.xxxx」といった数字で示す稼働率を気にする企業も多いと思います。
最新の数字は手元にないのですが、落ちるという印象はありません。2~3年前に十数分止まったことがあって以来、あまり記憶にありません。計画停止はもちろんありますが、それもかなり短くなってきています。業務への影響は最小限で済んでいます。
もちろん、1秒たりとも止まってはいけないシステム、例えば銀行のATM(現金自動預払機)などにクラウドを使うかといえば、それはないでしょう。
――クラウドを使用する場所とそうでない場所の境界線はどんなところですか?
パブリッククラウドでもAWSの場合は、IaaSであるEC2(Amazon Elastic Compute Cloud)を使えば、システムの構成をすべてユーザー側で設計し、構築できるので、やろうと思えばできます。中堅中小規模の企業などには、ケンコーコムがAWS上でSAPを稼働させたように、あらゆるシステムをクラウドで構築する例も出始めています。