9月初めに発表されたMicrosoftとNokia間の取引合意について、事業売却などの契約成立に至った経緯を詳述した記事が、The New York TimesとAllThingsDにそれぞれ掲載されている。
・From “Can We Talk?” to a Coffee-Table Mishap ― The Inside Story of Microsoft’s Nokia Deal - AllThingsD
・A Bloody Ballmer and Stalled Discussions on the Long Road to a Nokia Deal - NYTimes
大きな企業買収などがあった際に、こうした「内情」をまとめた記事が出るのはある種の「お約束」のようで、例えば2012年春に株式公開前のFacebookがInstagramを買った際にも「10億ドルのお買い物を、Mark Zuckerbergが3日(週末の金土日)で決めた」「両社に投資していたMarc Andreessenが、定例のミーティングでZuckerbergの家に出向いたら、そこにKevin Systrom(InstagramのCEO)がいるのでびっくりした」というような話を読んだ覚えがある。
・In Facebook Deal, Board Was All But Out of Picture - WSJ
またMicrosoft-Nokiaの発表前日に明らかにされていた米Verizon Communicationsと英Vodafoneとの総額1300億ドルの取引――Vodafoneが保有するVerizon Wireless株式45%をVerizon Communicationsが買取り、完全子会社化する、というもの――についても、やはり同様の「内幕もの」の記事がBloombergに出ていたりもする。
・Colao Cut Verizon Deal in Talks From Tanzania to California - Bloomberg
余談になるが、この類いの記事の特徴は、当事者の企業と付き合いの長い(もしくは深い)有力媒体の担当記者が書いていること、それから絶対に内部者以外は知りようもなさそうな「お土産話」(=エピソード)が必ずと言っていいほど織り込まれていること。
今回の場合も、AllThingsDの記事を書いたIna Friedなどは以前在籍したCNET時代から足かけ10年(以上?)の「Microsoft番」でBill GatesやSteve Ballmerをはじめとする幹部連中に何度もインタビューしたりしている人物。
また後者の点については、2011年2月の「MS-Nokia戦略提携」の際には、あるとき交渉のためにMicrosoft幹部一行を乗せてヘルシンキ(フィンランド)に向かっていた社用機が何かの事情で目的地の空港に下りられないことになり、急きょストックホルム(スウェーデン)の空港に着陸、そこから一般の旅客機に乗り換えていくことになって、空港内のラウンジで搭乗便を待っていたところ、旅券かなにかの問題でBallmerの名前を呼ぶアナウンスがラウンジ内に流れて……といったドタバタがあっという記事を目にした覚えもある(ただし、該当する記事は見つけられなかった)。
それと同様のハプニングが、今回の一連の交渉のなかでもあった――ある長丁場のミーティングの合間に、Nokiaが出した提案書を歩きながら読んでいたBallmerが、書類にすっかり気をとられてガラスのテーブルに激突して転倒、目の上を切るほどの傷を負ったが、それでもバンドエイドで応急処置したまま話し合いを続けた、といった話がいずれの記事にも出てくる。