以前の記事「NTTドコモがiPhoneを展開しない3つの理由」。
Appleの「iPhone 5c」と「iPhone 5s」は、日本国内でのiPhoneのシェアを再び引き上げることになりそうだ。
BCNの調べによると、2012年10月のiPhoneのシェアは50.9%だったが、2013年に入ってからは約3分の1となる、31~35%で推移していた。これがこの9月のシェアは一気に高まることになろう。
その最大の理由は、すでに既報のようにソフトバンクモバイル、KDDIに続き、NTTドコモがiPhoneの取り扱いを開始するようになった点である。
電話番号をそのままで他のキャリアへ移行できるMNPで、ドコモからの流出に歯止めがかからなかったのは、ドコモがiPhoneを持たなかったのが最大の要因であるのは自他ともに認めるところ。中には、ドコモからiPhoneが発売されることを長年にわたって待ち続けたユーザーもいるだろう。iPhone発売で一度他社に移行したユーザーを含めて、“ドコモのiPhone”を購入するユーザーが一気に増えるのは明らかだ。
ドコモにとってギリギリのタイミング
これまでドコモがiPhoneを扱わなかった理由はいくつかある。
ひとつは、日本固有のサービスであるおサイフケータイをはじめとして、ドコモが必要と考える機能をiPhoneには搭載できない点だ。
この点については、ドコモ側が歩み寄った格好といえよう。iPhoneの現在の売れ行きをみても、おサイフケータイなどの機能がなくても販売が好調なのは明らかだ。もちろん、iPhoneで「@docomo.ne.jp」のメールアドレスが利用できることは、当たり前ではあるが、ドコモにとっても重要な要素であったといえよう。
2つめの理由には、Appleが独自に提供するiPhone向けサービスの存在やドコモの一部サービスがiPhoneでは使えない可能性がある点だった。
ドコモ代表取締役社長の加藤薫氏は「ドコモの事業の進め方は、自らがプロバイダとなり、スマートライフのパートナーになること」とし、ドコモ自らが提供するサービスを同社のすべてのスマートフォンで利用できることを前提としている。
iPhoneでは、iTunes StoreやApp Storeを通じて、音楽や映画などのコンテンツ、ゲームをはじめとするアプリを購入できる独自のマーケットプレイスを形成している。ドコモでは、iPhoneでしか使えない同サービスを認めたくないという背景があった。また、iPhoneでドコモのサービスが利用できるようにすることも条件のひとつだったといえる。今回の契約では、10月からドコモの各種サービスが順次利用できる環境となっており、サービスに関しては、Appleとドコモの双方が歩み寄った格好といえる。
そして、3つめには契約上の問題が挙げられる。
関係者などの話によると、Appleは、iPhoneの取引条件としてスマートフォンの全販売台数の半数をiPhoneにすることを求めていた。さらに、Appleは、NTTが持つ特許を自由に利用できるようにすることを求めていたとも言われる。これは両者が折り合わなかった最大の理由だったといえる。
契約内容の歩み寄りはどこまで行われたかは不明だが、一部報道によると、スマートフォンの販売台数の4割という数値で折り合ったとも言われ、ここではApple側がかなり譲歩したともいえる。だが、見方を変えれば、Appleが提示したのはかなりハードルが高い条件であり、それを考えれば、仮に4割という条件が存在したとすれば、やはりドコモ側が譲歩したという見方も間違いではない。
今回のiPhoneの取り扱い開始は、流出に歯止めがかからないドコモにとっては、ギリギリのタイミングともいえる。ドコモ側はかなりの点で譲歩したと言わざるを得ないだろう。