エンタープライズトレンドの読み方

イノベーションハブの作り方--シリコンバレーvsイスラエル - (page 2)

飯田哲夫 (電通国際情報サービス)

2013-09-25 08:00

 そこで獲得されるスキルは、軍隊という特性上さまざまなチャネルから入ってくる大量のデータを解析して何らかの判断を下すというものだ。例えば、GoogleとFacebookを合わせたサイズのデータベースを使って演習をやるらしい。

 これが民間に適用されれば、例えば「ビッグデータから顧客の好みを解析し、製品開発を支援する」となったりする訳だ。そして、実際に兵役を終えた若者たちが、軍隊で学んだスキルを活かして就職したり、起業したりすることとなる。

 その結果、あるベンチャーキャピタリストが言うには、「世界のどこよりもビッグデータ関連のエンジニアやアナリストが集積しているのがイスラエルだ」ということになる。イスラエルは、国民1人当たりのベンチャーキャピタル投資が最も高い国なのだそうである。その首都テルアビブは、政府の強い関与のもとに作られたイノベーションハブであると言えるだろう。

方程式はあるのか

 これまでの失敗の歴史を振り返れば、恐らく方程式というものはないだろう。イノベーションハブとは、インドの家庭料理のようにいろいろなスパイスの組み合わせで出来上がる奇跡のようなものかもしれない。

 ただ、イノベーションの持続性という点では、何よりも人材が流れ込み続ける仕組みになっているかが重要なのだと思う。イスラエルであれば、国民の義務として若者が流入し続けるし、シリコンバレーでは、国内だけでなく、海外からも優秀な人材が供給され続けている。

 また、イノベーションハブの定義も重要だ。スタートアップ企業が集まるだけがイノベーションではないだろう。基礎研究にフォーカスする方法もあれば、応用フェーズに特化する方法もある。

 イノベーションハブの設計に人や文化が重要な側面を占めるのであれば、かつて日本が応用を得意としたように、各国の産業の特性や国民性などに応じて、イノベーションハブを定義するべきだろう。

 シリコンバレーの複製が全てではない。ただ、何もしないことは、Eastman Kodakの複製を意味することは間違いない。

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飯田哲夫(Tetsuo Iida)

電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。1992年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。

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