本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、日本IBMのMartin Jetter 代表取締役社長と、富士通の山口裕久 次世代情報系ソリューション本部長の発言を紹介する。
「私の笑顔を見ていただきたい。この表情が当社のビジネスの現状と今後の手応えを表している」
(日本IBM Martin Jetter 代表取締役社長)
日本IBMが10月7日、都内ホテルで事業戦略説明会を開いた。Jetter氏の冒頭の発言は、その会見で、同社のビジネスが好調に推移していることを表したものである。
日本IBM 代表取締役社長 Martin Jetter氏
昨年5月に日本IBMの社長に就任したJetter氏は、これまで「組織」「コンテンツ」「人材」の3つの観点から経営の変革に取り組んできたと説明。組織については全国主要地域に4つの支社を新設し、顧客の近くでビジネスを展開する形で新たなカバレッジによる体制を整備した。
また、コンテンツについては、クラウドやビッグデータの活用などの成長分野に注力し、日本の顧客が国内外で競争力を発揮できるように努めてきたという。さらに人材については、モバイルデバイスを活用した新たな研修方法を導入。この研修方法はその後、日本発でグローバルに展開したとしている。
Jetter氏によると、こうした取り組みが奏効し、日本IBMのビジネスはここにきて順調に推移しているという。その状況を同氏なりに表現したのが、冒頭の発言である。
日本IBMの業績は、売上高で1兆6000億円余りだった2001年をピークに、2012年にはほぼ半減するところまで落ち込んでいた。だが、米IBMが公表している地域別売上高によると、日本は2012年10~12月期以降3四半期連続で3~5%増を達成し、10月16日に発表される2013年7~9月期も好業績が期待されている。
質疑応答でもあらためて社長就任後の業績の推移について聞かれたJetter氏は、「さまざまな変革に取り組んできたことで、成長軌道に乗せることができたと思っている。ただ、まだまだやらなければならないことは多い。IBMにとって日本は、これまでと同様、非常に重要な市場であることに変わりはないので、引き続き注力していきたい」と力を込めた。
会見では米IBMから3人のシニアバイスプレジデントも登壇し、クラウドサービスやビッグデータ活用などそれぞれ担当する事業の説明を行った。また、この日、同じホテルでユーザー企業のシニアリーダーを対象に行ったプライベートイベント「THINK Forum Japan 2013」には、米IBMのVirginia Rometty CEOも来日して講演を行った。
日本IBMは昨年9月にも同様形式で、事業戦略説明会およびプライベートイベントを開催しており、今回が2回目となるが、昨年と同じく米IBMのCEOをはじめとした首脳陣が顔をそろえたのは、日本法人を成長軌道に乗せたJetter氏の辣腕たるところか。