日本IBMは10月7日、ユーザー企業向けイベント「THINK Forum Japan 2013」を開催した。国内のIBMユーザー企業のビジネスリーダー約360人が参加。「THINK for a Smarter Japan-The Leadership Agenda」をテーマに、産官学のリーダーとのパネルディスカッションを通じて、企業競争力の基盤であるビッグデータの活用とモバイルやソーシャル、クラウドとの融合による、さらなる可能性について論議を深めた。
冒頭に挨拶に立った日本IBM代表取締役社長のMartin Jetter氏は、「昨年9月に第1回目のTHINK Forum Japanを開催し、日本のオポチュニティと新たなリーダーシップを模索したが、その結果は、非常に大きな評価を得た」と振り返り、日本経済の現状に対して以下のような認識を示した。
「日本の経済は不確実な状況にあったが、景気回復の兆しが見えてきた。私は日本の未来に楽観視している。それには理由がある。過去1年半にわたって革新的な有能なリーダーに会い、国内外で成功していることを感じた。調査によると、サービス分野のうち12カテゴリで日系企業がトップである。日本は高い購買力を維持している。売上高に対する研究開発投資は韓国に次いで第2位である。これは、日本のよりよい将来を構築する源泉になる」
またJetter氏は「日本で改善の余地があることも明らかになった」と前置きし、以下のように主張した。
「Cクラスの経営層(CxO)を対象にした最新の調査によると、世界の企業に比べて、デジタル戦略を持っていない日本の企業が多いことが浮き彫りになった。世界の企業はテクノロジの利用を加速している。日本の企業も追いついていかなくてはならない。日本の70%以上の企業が、成長のために近い将来、提携関係の強化を求めていることもわかった。国内外でエコシステムを強化していくことが、これから必要である」
Virginia Rometty氏
企業の運営の仕方が変わってくる
米IBMの会長であり社長、そして最高経営責任者(CEO)も務めるVirginia Rometty氏は「スマートな時代の競争優位とリーダーシップ」をテーマに講演。同氏は「昨年のこのフォーラムでは、新たな技術でもたらされる世界について話をした。1年でその技術インパクトが明確になっている。そして複数の技術の変化が同時に起こり、かつてない時期に入っている」と切り出した。
Rometty氏は、1兆のデバイスがネットにつながり、27億人がネットを利用している現状、モバイルやソーシャル、クラウドによって、ビッグデータが生まれ、この2年間で人類が生み出したデータの90%が生まれていることに触れながら、「情報が大量にあるため、もはやプログラミングはできない。自動で処理をしなくてはならない時代が訪れている」と今後を見通した。
「これからの時代は、企業の運営の仕方が変わってくる。それが、Smarter Enterpriseである。これは、すべての企業や政府が避けては通れないものである」と話したRometty氏は「Smarter Enterpriseには3つの特徴がある」として、それぞれを説明した。
「一つ目は、組織や企業は今までのように意思を決定し、価値を生むということは変わらないが、問題は、どうやってこれをやるのかという部分が変わるという点だ。具体的には、すべての意思決定が大量の情報と分析をもとにして行われる。二つ目は、価値を創造するためにインテリジェンスを注入することが必要であるという点。2020年には、15億個のスマートメーターが利用されると予測されている。2020年には90%のクルマがネットに接続し、これによって、走行距離連動型の保険のビジネスが生まれ、220億ドルの市場が創出されると予測されている。Smarter Enterpriseの時代には、すべての製品がスマートにならなくてはならない。そして、三つ目には事業の価値は、市場全体に提供するものではなく、個人に対して提供するものになるという点だ。ソーシャルエンゲージメントの手法も重要になる」
では、Smarter Enterpriseを実現するには、どこから手をつければいいのか? Rometty氏は「ビッグデータ対応、モバイル対応、そしてクラウドが重要である」とし、それらの環境を活用しながら「顧客誘導型のエンゲージメントを実行し、常に革新を行い、企業のポートフォリオをリミックスし、企業を刷新するといった活動が必要である。Smarter Enterpriseは新たな企業のモデルを作ることである」と語った。