IBMロメッティCEO「すべての製品は情報によって付加価値化する」 - (page 2)

大河原克行

2013-10-08 08:00

 Rometty氏は「将来は明るい時代になる。情報は21世紀の新たな天然資源になる。これを活用しなくてはならない。その上でプライバシー保護やセキュリティ対策について政策問題と技術で解決する必要がある」とも提言した。

 「1937年にノーベル賞学者のRonald Coaseは『取引コストを下げることが、企業の経済活動の目指すべき役割である』としたが、Smarter Planetは、それを実現するものになる。将来の企業は深い専門知識を持ち、高付加価値化し、信頼を醸成するために企業は必要である。これからは、情報を活用し、価値を作ることが、企業の将来の姿である。Smarter Enterpriseを作ることが、今日ここにいるリーダーの役割である」(Rometty氏)


ビッグデータは“両刃の剣”

 パネルディスカッションでは、ハーバード大学経営大学院教授の竹内弘高氏をモデレータに、パナソニック代表取締役社長の津賀一宏氏、NKSJホールディングス社長兼損害保険ジャパン社長の櫻田謙悟氏、Rometty氏が登壇。まずは「競争優位性」について議論した。

 パナソニックの津賀氏は、「パナソニックは、デジタル家電の領域で韓国メーカーに痛い目にあっていると言われているが、私は競争優位性がないとは思わない。だが、今までの通りのやり方でパナソニックを考えていると、どんどんダメになると考えている。お客様の暮らしに役立ちたいという姿勢は変わらないが、その考え方を変えなくてはならない」という見方を示した。

 「このほど、ブランドスローガンを変えた。今までの『Ideas for Life』はマスをイメージしたものであったが、新たなスローガンである『a Better Life, a Better World』は“a”といっているように個に向かったものである」と語り、「個への対応という点では、スチームオーブンエレックへの不満を解消することである」と切り出し、自身の事例を披露した。

 「電子レンジは、ワット競争が中心となり、何分でチンするのかということが重要であったが、さまざまなセンサで庫内の変化を見ている。わが家でも家内が使っているのだが、ある日、うなぎの蒲焼きを買って帰り、冷めたので最高の状況で食べたいということで、メニューを探したが、うなぎの蒲焼きがない。近いメニューでうなたま丼があったので、それでチンしたら、フニャフニャになった。なぜ、うなぎの蒲焼きがメニューにないのかと言ったら、まだ検証していないということだった。こうしたことが、きめ細かく対応できるような家電メーカーにならなくてはならない」(津賀氏)

 これに対して、米IBMのRometty氏は「すべての製品は情報によって付加価値化する。日本は情報を活用して、サービス化できる国である。クラウドを活用すれば、電子レンジでもすぐに適切なメニューを選択できる。私はこうしたサービスがあれば、お金を払ってでも利用したい」との見方を示した。

 櫻田氏は「競争優位の概念が成り立つには、マーケットそのものが成り立つことが前提である。保険の業界は人の数、住宅の数、自動車の数が重視されるが、日本では右肩下がりである。構造的にマーケットは小さくなる。そうしたところで、いながらにして儲かる仕組みと、儲かるところに出て行くという、2つの取り組みがある」と述べて、そして以下のように続けた。

 「新たなサービスを作るには、ビッグデータを活用する必要がある。だが、保険の業界では、ビッグデータを活用しすぎると“両刃の剣”になる。ビッグデータとアナリティクスは、究極のカスタマイゼーションを可能にするが、これを追求しすぎると『今の運転の仕方をしていれば、あなたは自動車保険がいらないですよ』とか『45~50歳で胃ガンの確率が上がりますから、その保険だけでいいですよ』ということになる。今は“まさかのための保険”という言い方をしているが、ビッグデータを使うと“まさかのまさかのまさかの保険”になる。つまり、保険会社は、保険だけでは儲からなくなり、サービス事業に進出しなくてはならない」(櫻田氏)

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