「必要なのは顧客を知ること」--IBMがマーケティングに進出する本当の理由

大河原克行

2013-03-06 19:12

 日本IBMは3月6日、東京・六本木のグランドハイアット東京で「CMO+CIO Leadership Forum」を開催した。国内大手企業の最高マーケティング責任者(CMO)と最高情報責任者(CIO)、政府関係者など200人以上が参加している。

 午前10時~午後5時30分の終日、基調講演やパネルディスカッションを通じて、企業の成長戦略の中でもマーケティング分野でIT活用が重視されていること、CMOやCIOの役割の変化などについて触れた。IBMはすでにパリとニューヨークで、同イベントを開催している。

 CMOとCIOが参加し、これからのマーケティングについて議論する場を提供。ビッグデータ時代のマーケティングの役割を考えるとともに、CMOとCIOとの連携でマーケティングイノベーションへとつなげる可能性を模索した。今回の日本での開催は、それに続くものとなっている。


「CMOとCIOが対話を始めることが重要」と提言するJetter氏

 日本IBM代表取締役社長のMartin Jetter氏は「なぜ、IBMがマーケティングに口を出すのか。それは、企業の成長戦略を担うのがCMOであり、CIOであり、今こそ、その役割を再定義する必要があるからだ。CMOとCIOが対話を始めることが重要である。会社に戻ったら、今日の経験をCEO(最高経営責任者)と共有してほしい」と同社の主張を明確にしている。そして企業を取り巻く環境を以下のように説明している。

 「IBMが、2011年に全世界の1700人以上のCMOを対象にした調査『CMO Study 2011』によると、多くのCMOがITを駆使した新たなマーケティングに乗り出す必要を感じていることがわかった。ソーシャルやモバイルに長けた世代に向けて、どうマーケティングをしていくのかが、これからの鍵になっている。同様に『CIO Study 2011』では新たなテクノロジに対する関心が高まっていることがわかった。総務省のデータによると、2001~2011年の10年間でネット上のデータ量は700倍になっている。ネットが社会インフラとなり、世の中のゲームチェンジを起こしていることがその背景にある」

 Jetter氏は続いて、マーケティングの重要性を以下のような言葉で表現している。

 「経済産業省の発表では、日本のeコマース市場は、8兆5000億円に達しており、過去5年間で2桁成長を続けている。これはコンビニエンスストア市場を上回る規模だ。2016年には、スーパーマーケットの市場規模を上回る可能性もあるだろう。こうしたeコマース市場拡大の動きは、日本国内だけでなく、グローバルにみられている動きであり、輸出主導国である日本にとって、競争は避けられないものとなっている。BtoBの企業もウェブで購買を決定しており、買う側が多くの知識を持っているケースが多い。今、マーケティング担当者がやらなくてはならないことは、顧客に対するパーソナライゼーション。顧客を知ることであり、顧客が持つ『いつでも買いたい』『他の店舗とも比較したい』という要求にも対応しなくてはならない。そこでITによる効率化がカギになる」

 Jetter氏はまた「今、マーケティング領域で企業がやらなくてはならないことは、顧客一人ひとりを理解すること、個別の顧客とエンゲージすることであり、カルチャーとブランドの時代の中で、透明性を持つことが必要。顧客が企業と製品に対して議論する環境が存在するということを理解しなくてはならない。こうした変革を好機と捉えて、ITを活用した企業競争力の強化に取り組むべきだ」と主張している。

 CMO Study 2011では、今後3~5年で顧客満足度を向上させるために必要な変革として重要視しているのは、「個々の顧客ニーズの理解向上」と「市場ニーズへのレスポンスタイムの短縮」であり、マーケティング現場では、個人のニーズを把握し、迅速に応える体制作りが必要であることが浮き彫りになっている。

 2012年にCMOが関与したIT関連費用は13兆8000億円に達し、今後も7~8%の伸びが見込まれていること、マーケティング分析にかける費用は60%増になるとの予測値なども示された。


熱気に包まれる会場

 基調講演では「The Future Practice of Marketing, Shaping our Belief」と題して、米IBMでマーケティング&コミュニケーションズを担当するシニアバイスプレジデントのJon C. Iwata氏と、キヤノンマーケティングジャパン会長の村瀬治男氏が登壇している。

 パネルディスカッション「Understanding Individual Customers and Creating Value at Every Touch Point」には、米IBMのソフトウェア・ソリューション・グループでシニアバイスプレジデントを務めるMike Rhodin氏、ジョンソン社長の鷲津雅広氏、千趣会の取締役執行役員の星野裕幸氏、日産自動車の執行役員を務める星野朝子氏が登壇。一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授の楠木建氏がモデレータを務めた。

 「Being an Authentic Brand and Culture」をテーマに、ローソンで取締役副社長執行役員兼最高執行責任者(COO)を務めている玉塚元一と、オグルヴィ・アンド・メイザー・ジャパン社長の久保明彦氏が対談している。

 米IBMでソフトウェアグループインダストリー・ソリューションを担当するゼネラル・マネージャーのCraig Hayman氏による「Smarter Commerce Engaging the Empowered Customer」と題した講演、日本IBMのグローバル・ビジネス・サービス事業スマーター・コマース担当パートナーの浅野智也氏による講演も行われた。


会場全体がビッグブルーとなっている

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