中国市場とテクノロジの活用に明るい経営者
Tim Cookが中国市場について、Appleにとっての「最重要市場」と再三言ってきていることもよく知られているが、この点について独立系アナリストのBenedict Evansが参考になる情報をTwitterに投稿している。
Burberry in China - 69 stores v Apple’s half-dozen.
このツィートにあるように、中国本土にあるApple Storeの軒数はまだ1桁台、それに対してBurberryはすでに69店舗も直営店が存在する。またこれに付された図をみると、Burberryの店舗が都市化の進んだ沿海部だけでなく、内陸部の主要都市まで展開されていることもわかる。
Om Malikは、AppleによるAngela Ahrendtsの起用に関して5つの長所を挙げているが、その中にも中国市場での展開拡大が含まれている。5つの長所については下記の通り(註6)。
- Ahrendtsはラグジュアリーブランドの小売ビジネスについて直感的に理解しており、Apple Storeを再活性化、若返りさせる新たな方法を見つけ出すことができる
- Ahrendtsは「経験」を重視するショッピングのコンセプトについて、ほかの誰よりもよく理解している
- Ahrendtsはオペレーションに関する効率化と、小売の「経験」に関するアートの部分とのバランスを保つことができる
- AhrendtsはAppleによる中国市場での事業拡大に力を貸すことができる(BurberryのCEOとして多くの経験を積んでいるため)。中国の地方都市にまでBurberryの店舗を展開したのがAhrendtsらのチーム
- Ahrendtsはオンラインでの小売りやデジタルの重要性をよく知っている
この5番目の点について、Bloombergには「Ahrendtsは、Burberryのファッションショーをウェブでライブストリーミング中継し、出品されたアイテムを顧客がショーの最中にオンラインで買えるようにした」との一節がある(註7)。また、Ahrendtsはテクノロジとファッションの融合を進める取り組みをだいぶ前から続けてきており、たとえば先月には「iPhone 5s」で撮影したファッションショーの模様を配信していた。またTwitterを使ってランウェイの舞台裏を撮した写真を公開していた、といった一節もある(註8)。
[Full Show - Burberry Prorsum Womenswear S/S14 - shot entirely with iPhone 5s]
Burberryはそのほかに「Facebook、Pinterest、Google+なども活用」といった記事(註9)も目にしたが、これらの取り組みが競合ブランドと比べた場合にどうなのか、といったことはわからない。ただ、それでもAhrendtsのもとでBurberryがソーシャルメディアを使ったマーケティングを積極的に進めてきていることは読み取れる。そして、こうした分野の取り組みについて「奥手」といわれても仕方のないAppleにとっては、Ahrendtsの知見や経験がそれだけ貴重なものになる、というのも比較的わかりやすい。Ahrendtsの責任範囲が、リアルの店舗網だけでなくオンラインも……となっているのも、このあたりの事柄が関係してのことだろう。
GigaOMのOm Malikはこれに続けて、Ahrendts起用に伴う5つの短所を挙げたり、「intimate computing」というあまり見慣れない言葉を持ち出して「いずれは人間が身に付けたさまざまな端末がスマートフォンを核にしてつながり合うことになる」云々などと書いているが、いずれもいまひとつ歯切れがよくない印象なので、ここでは割愛する。特に後者の取り組みについては刺激的な感じも伝わってくるが、如何せん情報不足――例えば、Yves Saint-Laurent(YSL)からAppleに移ったPaul Deneve(Appleでは「特別プロジェクト」担当とだけあって具体的に何をしているかは不明)とこのAhrendtsとの棲み分けなどについても何か書かれているわけではない。