Sikka氏はFioriの背景について、「ユーザー体験、そしてユーザー体験を可能にする技術革新がアプリケーションの進化よりも高速に進んでいる」と述べる。既存のアプリで新しいユーザー体験を利用できるようにする目的で開発されたのがFioriで、既存アプリの一部を除去できるため、SAPが進めるシンプル化の取り組みでも重要な役割を持つ。
「20年ぶりにすべてのSAPの体験が収束することになる」とYen氏、「Fioriは単に既存ソフトウェアを美しくするものではなく、コンシューマーレベルのユーザーインターフェイス(UI)をデバイスを超えて提供する」と説明した。「複雑なアプリケーションを分解して簡素化し、個人の利用に合わせてパーソナライズできる」とも述べた。

Sikka氏のスケッチ HANAとFioriによりITランドスケープが簡素化

モバイル向けFioriのデモ。メーカーが資材所要量計画アプリケーションを利用して製品コンポーネントの在庫切れを予測するものでバックグラウンドではHANAが動いている。
クラウドについては、5月に発表したSAP HANA Enterprise Cloudで現在、ERP、CRM、PLMなどが動かせるよう強化されており、オンプレミスとのシームレスな統合を提供していくとした。SAP HANA Enterprise Cloudは大企業向けで、中規模向けでは「SAP All in One」および「Business ByDesign」、小規模企業向けには「SAP Business One」をそろえる。「業界で最も包括的なクラウドを提供する」とLeukert氏。中規模顧客は合計で2万3000社、小規模顧客は4万社を擁するとのことだ。
「20年前にビジネスを再発明したソフトウェアが、再びビジネスを再発明する」とLeukert氏は述べ、クラウドの波が押し寄せる業務アプリ業界での転身を印象づけた。
HANAベンチャープログラムに1000社が参加
Sikka氏のスピーチは、米国科学者のDouglas Engelbart氏のABCモデルに沿って、HANAで変化を遂げるSAPの戦略を説明する、というストーリーだった。Engelbart氏は初期のコンピュータ開発に寄与した人物で、ABCモデルとは製品開発や製造など組織の中心となるビジネス、タスク、目標(A)、品質改善やなどAを改善するためのプロセス(B)、Bを改善するための活動(C)となる(詳しくは、Douglas Engelbart Instituteのサイトを参照のこと)。Sikka氏は、Aを「プラットフォーム」、Bをプラットフォームの上で動く「アプリケーション」とした。
最後に説明したのはCで、「目的」。リーチの拡大など「さらにすばらしい目的を見いだす」として、取り組みを紹介した。

Douglas Engelbart氏のABCモデル