米Autodeskは米国時間12月2日からイベント「Autodesk University 2013」を開催。イベント2日目の12月3日には基調講演が開かれた。
Autodeskは、製造や建築土木、CGと業界を対象に、コンピュータの画面で図面を作成するソフトウェアである「Computer Aided Design(CAD)」、CADで作成された形状データを入力データとしてコンピュータで工作機械の加工プログラム(NCデータ)を作成するソフトウェアである「Computer Aided Manufacturing(CAM)」などの事業を展開している。近年は、製造業での製品ライフサイクル管理システム(PLM)なども手掛けている。
Autodesk University 2013は東京を皮切りに世界各地でAutodeskが開くイベントであり、12月2日から開かれているラスベガスでのイベントは最も大きなものであり、9000人前後が参加しているとみられる。
Autodesk シニアバイスプレジデント兼CTO Jeff Kowalski氏
外側をよく見る必要がある
イベント2日目の基調講演にはAutodeskの最高技術責任者(CTO)のJeff Kowalski氏が登壇。Kowalski氏は「外側に目を向けよう」とイベント参加者に呼び掛けた。ここで言う“外側”とは、企業の外側であり、企業の外側に「“VUCA”な時代」(Kowalski氏)を乗り越えるためのヒントが隠されているからだという。
Kowalski氏が言うVUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(あいまいさ)を示す略語であり、過去のやり方が通じない世界の現状を示すものとして近年米国内外で言われ始めている言葉だ(もともとは軍事の分野で使われていた)。Kowalski氏はこのVUCAの時代を乗り越えるためには、自分の内側(Inside)と自分の外側(Outside)の両方をよく見る必要があると提言した。
Kowalski氏は外側に目を向ける際の視点として“ツール、ピープル、ワーク、インサイト”の4つを挙げた。ツールの視点からは「“リアリティコンピューティング”で正確なモノも作れるようになっている」(Kowalski氏)ことを挙げている。これは同社のCAD/CAMのように、人間が頭で思い浮かべたことが現実のものになることを踏まえている。
外側への視点として挙げたピープルについては、消費財メーカーのProcter & Gamble(P&G)を例とした。Kowalski氏によると、P&Gは現在商品の50%を外部と協力して開発することで、売り上げを支えているという。企業の外側にあるリソースを活用することは「オープンイノベーション」として現在注目されている。
外側に目を向ける際の視点としてKowalski氏が挙げたのがワークだ。これは個人のスキルセットをどのようにして拡大させていけばいいのかが問われるが、Kowalski氏は「必要ではないことから学んでいくことが重要」と提言した。そして外側への視点として4つめに挙げたのが「常に外側への“インサイト(洞察)”を欠かさないことだ」(Kowalski氏)。外側への洞察としてKowalski氏が挙げたのが「リバースイノベーション」だ。
リバースイノベーションは、先進国の企業が新興国で成功するための方法論であり、近年注目を集めている。リバースイノベーションでは、先進国の成熟市場で成功した製品を新興市場で成功させるには「70%の性能を70%の価格」で売ったとしても成功することがなく、新興市場で成功するには「50%の性能を15%の価格」の製品が求められているという。
この「50%の性能を15%の価格」を実現するには、成熟市場での成功体験を持ち込むのではなく、新興市場で一から製品も含めたビジネスのやり方そのものを開発することが重要とされている。そして、新興市場での成功した製品を成熟市場に投入すると成熟市場でも成功するとされている。
Kowalski氏は、このリバースイノベーションの具体的な成功例として、General Electric(GE)を挙げた。GEは、新興市場であるインド向けに医療機器を開発。この医療機器を米国市場に輸出すると米国市場でも売れたという。
CAMもSaaS化
基調講演では、Kowalski氏の後にAutodeskの社長兼最高経営責任者(CEO)のCarl Bass氏も登壇。Bass氏は、Autodeskのソフトウェアを活用しているユーザー企業がユニークな製品を開発していることを挙げながら、近年力を入れているクラウドサービスのメリットを強調した。