現在は「人類史上最も良い時期」
後半はMichael Dell氏を交えた対談となったが、2013年に非公開化に踏み切ったDell氏とMusk氏は株式相場に対して「ジェットコースター」という見解で一致した。Teslaは公開企業だが、Musk氏は以前、Teslaの株価が過大評価されていると公言している。
この日もMusk氏は「株価がそんなに上がってほしいとは思っていない」と述べた。株価は「モチベーションになる」というより「気が散るもの」とMusk氏。「Teslaの基本は大きく変わっていないのに株価が大きく上下する」と「ジェットコースターのような」市場に少しばかりの不満を見せた。
対するDell氏は「25年間、ジェットコースターを経験した。いまは解放された」と安堵を隠さない。「市場は資本提供などの役割がある」と認めながらも、公開企業では難しい「長期的フォーカスが必要」と非公開化の背景を説明した。
「Dell World 2013」での一幕で、非公開化に踏み切ったDell氏が、Musk氏と株価の変動について語った
Dell氏は前段の基調講演でコンピュータをはじめとした情報技術が貧困などの格差解消に寄与していることを主張しており、3人の対談のテーマは世界レベルでの問題に及んだ。Dellが展開している東南アジアなどの地域について「マイクロプロセッサの進化、ネットワーク、情報などのメリットを受け、(進出当時から)変わってきたことを感じる。貧困対策としての成果が見られる」とDell氏。一方で「技術があるだけでは問題は解決しない」として今後は情報の収集と活用、保護なども課題になるとした。
Musk氏は、気候変動などの問題を認めながらも、「人類の歴史において、現在は最も良い時期」と述べる。楽観の要因として暴力が減っていることなどとともに「情報の平等」が進んでいるとも指摘した。
「30年前、世界で最も情報を持っていたのは米国大統領だった。今日われわれは、30年前の米国大統領よりもたくさんの情報にアクセスできる」とMusk氏。インターネットの恩恵だが、情報へのアクセスが学びやネットワークなどに広がっているという。そして、はびこる悲観論について「ネガティブを無視すべきだとは言わないが、新聞は悲劇や惨時の顕微鏡のようだ」とMusk氏は指摘した。
対談からは、学生時代に抱いた自分の信念に忠実に、一歩一歩トライを重ねている姿勢を感じた。Fortune誌はMusk氏を故Steve Jobs氏と比較していたが、きっとMusk氏は自分自身を誰とも比較していないだろう。遠くを見るMusk氏の目には何が見えているのだろうか。