UI/UXで“おもてなし”

UIやUXは経営者と二人三脚で決める

大塚雄介(ネクスウェイ)

2014-03-31 08:05

 前回は、経営者に自社サービスのユーザーエクペリエンス(UX)やユーザーインターフェース(UI)の課題を認識してもらう3つの方法について解説しました。

 今回は、経営者と信頼関係を築き、意思決定を積極的に行ってもらう方法について解説したいと思います。仮に、経営者がUXデザインを直接担うことが難しいようであれば、UXデザインの意思決定を任せてもらうという方法があります。従業員数が数百~数万人規模の企業であれば、経営者を事業部長やリーダーと置き換えてもいいと思います。

 ユーザーに心地よいUXを提供するためには、特定のデザイナーやディレクターがUXデザインの知識を持っていればいいわけではありません。組織全体でUXデザインを共通認識として持つことが大切です。特に最終決定権を持つ経営者に積極的に意思決定を担ってもらうことがプロジェクトの成否を分ける大きな要因となります。

 経営者に積極的に意思決定をしてもらうためには、ユーザーの生の声を逐一共有することが大切です。ユーザーはどのような振る舞いをしているのか、どのような気持ちで自社サービスを使っているのか、これらを逐一経営者と共有することで積極的に意思決定を依頼します。もし経営者との距離がある場合は、少なくともあなた自身がユーザーのことを「憑依した如く」理解していることが必要です。仮に最終決定権が経営者にあったとしても意思決定のための根拠が必要です。

 その根拠をあなた自身が持っているとしたら、プロジェクトは正しい意思決定がなされユーザーに心地よいUXを提供することができます。また、このようなことを繰り返していくと経営者もあなたに信頼を寄せ、意思決定の大部分をあなたに委任してくれるようになり、プロジェクトをよりスムーズに進められるようになるでしょう。

 私の周囲では「社長や上司はUXをわかっていない」「UXよりも新しい機能を追加しろと言われる」といった声をよく聞きます。確かにそれもあると思います。UXという概念自体が個々数年で急激に重要性を説かれるようになったためかもしれません。

 しかしながら、仮に経営者がUXの重要性を理解していなかったとしても、プロジェクトに参加しているあなたが圧倒的なほどユーザーの気持ちを理解していれば、その理解をプロジェクトで力説することで、ユーザーに心地よいUXを提供できるのではないでしょうか。

 私の場合、プロジェクトが開始した際、最優先することがあります。それは、サービスを作るための課題を自分なりに仮説立てしてユーザーヒアリングと観察を最低2週間は繰り返すことです。往々にして、プロジェクトは、ユーザーの課題やユーザー体験がぼんやりしています。プロジェクトの中で話をしていると、何となく自分たちは理解しているつもりなのですが、本質的な相互理解がなされないままサービスを作りはじめてしまうことがしばしばあるようです。

 何となく良さそうなサービスでも、ユーザーを理解していないサービスは、結果的にはユーザー利用が進みません。このようなリスクを避けるためにも最低2週間の時間をとり、数十人の想定ユーザーに実際会ってコミュニケーションを取り、ユーザー理解を深めます。この時期はアウトプットも限られ、サービスも作られないため不安な時期が続きます。そのため、可能であれば経営者とこの2週間の必要性を共有しておくことが大切です。

 経営者と信頼関係を築き意思決定を積極的に担ってもらうため、日々のコミュニケーションや、UXデザイン以外での互いの信頼関係も重要です。ユーザーに心地よいUXを提供するために、まずはその他の小さな仕事から信頼関係を築いてみてはいかがでしょうか。

大塚雄介
2006年、早稲田大学大学院卒理工学修士号取得。同年、ネクスウェイに入社。ネット広告新規法人営業、新事業創出プロジェクトを経て、新規事業(クラウドサービス NEXLINK)のUI責任者に就任。専門はIA/UX/UIデザイン。2013年より、「STORYS.JP」のCMO(最高マーケティング責任者)兼任。Facebookはこちら

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