米Microsoftがパブリッククラウドサービス「Windows Azure」の名称を4月3日より「Microsoft Azure」に変更すると発表した。同社にとっては大きな戦略転換を意味する。
MicrosoftがAzureを名称変更した理由
2010年1月から本格的な商用サービスが始まったWindows Azureは、当初よりPaaSと位置付けられてきたが、2013年4月からは仮想マシンによるIaaS機能も追加された。
これにより、WindowsやSQL Server、.NETといったMicrosoftのプラットフォームだけでなく、LinuxやOracle Database、Ruby、Python、Java、HadoopといったさまざまなOSや言語、ミドルウェアにも対応できるようになった。そうした状況から、もはやサービス名に「Windows」を冠するのは適切ではないと判断したようだ。
同社は今回の名称変更について、「『顧客のためのパブリッククラウドプラットフォーム』としてのAzureをMicrosoftの戦略に反映したものだ」とし、「顧客はあらゆるニーズに応えるパブリッククラウドプラットフォームを求めており、それがMicrosoft Azureだ」と説明している。
今回の名称変更は、改めてAzureがPaaSだけでなくIaaSの機能も備えたパブリッククラウドサービスであることを明確に示すものであり、同社にとっては大きな戦略転換を意味する動きである。
名称変更で競合相手に改めて宣戦布告
振り返ってみれば、Azureにおける大きな戦略転換はこれが2度目になる。1度目は、販売展開におけるパートナー戦略を転換した。具体的には、当初Azureの運営を委託する協業形態を推し進めたが、2013年後半に方針転換し、Azureの運営についてはすべてMicrosoftのデータセンターで行う形にした。
その経緯や理由については、3月4日掲載の本コラム「知られざるWindows Azureの戦略転換」に記したので参照いただくとして、筆者はその中でMicrosoftの最大の狙いについて「顧客のデータを自前のデータセンターで管理することで顧客と直接コンタクトを持てるようになる。すなわち“顧客の囲い込み”をガッチリできるようになる」からだとの見解を述べた。
今回の2度目の戦略転換は、その顧客の囲い込みをさらに広げるべく、サービスの範囲を拡大したのがポイントだ。では、IaaS/PaaS型サービスとして名称が変わるAzureは、激しい市場競争にどう立ち向かっていくのか。2月下旬に来日したMicrosoftのAzure事業責任者であるゼネラルマネージャーのSteven Martin氏に競合相手や勝算について聞いたところ、次のような答えが返ってきた。
「競合相手と見ているのは、IaaSではAmazon Web Services(AWS)、PaaSではGoogleだ。ただし、Azureでは両方の機能を兼ね備えており、しかもクラウドとオンプレミスを柔軟に行き来できるハイブリッド環境を実現することができる。ほかにはないこの利便性が、今後多くのクラウドユーザーに受け入れられる決め手になると確信している」
AWSやGoogleとの戦いは、今後ますます過熱するとみられるが、今回の名称変更でまさしく「Microsoftのパブリッククラウドサービス」と銘打ったところに、同社の改めての宣戦布告ぶりがうかがえる。