筆者は何年か前、オンライン株取引システムの開発を伴う、極めて重要なプロジェクトを率いたことがある。その際、アプリケーションを動かしていたシステムソフトウェアの、トランザクション処理の専門家から支援を受ける必要があった。筆者がそのプロジェクトに欲しかった人物は、その分野では極めて優秀だったのだが、実は非協力的であり、このプロジェクトで働くのを嫌がっていることが分かった。私は、ぐずぐずと待つことはしなかった。その代わり、ずっと経験が浅い人材をプロジェクトに引き入れた。それでも、時間は想定より長くかかったものの、必要は仕事は達成することができた。とにかくプロジェクトは成功し、経験が浅かった人材は、それ以降も使える貴重なスキルを得た。そして、非協力的な従業員にプロジェクトを「人質に取られる」事態を避けることができた。
さまざまな組織の情報最高責任者(CIO)と話をすると、災害復旧計画に、重要な技術スタッフに関する危機管理計画を組み込んでいる人がほとんどいないのに驚かされる。人員に関する危機管理計画では、主に災害で管理職が業務に就けなくなった場合の代替計画に焦点が当てられている。しかし実際には、IT業務を行う上では、鍵となる技術スタッフは管理職と同じくらい(あるいはそれよりも)重要だ。
ある金融サービス会社のCIOから、次のような話を聞いたことがある。「われわれは数年前、サービスの1つに合わせてIT部門の文化を大きく変え、組織内の部門を再編した。このプロセスは必要なものだったが、組織再編の過程で、領域横断的なサービス文化の一部になるのが気に入らず、従来の技術的専門性に閉じこもって運用を続けたいと考えている重要な技術者を失う危険があることに気づいた」
米ドルで年収6桁級のトップレベルの専門家が、もっと居心地のいい会社に何人も転職するというのは、CIOが最も恐れる事態だ。
では、何がこのCIOを救ったのだろうか。
「私は重要な技術者を失うことを予想し、そのことをリスク管理戦略に含め、これについて上司と議論し、承認を得た。それによって、失った職位に人材を再雇用できるまで、社外のITコンサルタントからなる一時的なスタッフと共に業務に当たる準備を整えた」と、このCIOは話した。
現在では、この組織は再び充実した社内ITスタッフを揃えており、新たなサービスの方向性を採用したことで、さらに潜在力を高めている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。