日本ヒューレット・パッカード(HP)がこのほど、ハードウェアとソフトウェアを一体化した統合型システムを発表した。「垂直」でない統合型に同社の強いこだわりがあるようだ。
統合型システムで4つのソリューションを用意
「新たな統合型システムは、パートナー企業が提供する業界標準のソフトウェア技術と業界標準に基づくHPのハードウェア技術を組み合わせることで、オープンかつ柔軟性の高いIT基盤を実現したものだ」――日本HPのHPサーバー事業統括本部 HPサーバー製品統括本部 統括本部長の橘一徳氏は、同社が開いた新製品の発表会見でこう強調した。
日本HP HPサーバー事業統括本部 HPサーバー製品統括本部 統括本部長 橘一徳氏
同社が発表したのは、「HP ConvergedSystem」と名付けた統合型システムである。ラインアップとして、サーバ仮想化、クラウド、ビッグデータ、モバイルの4つのワークロードにフォーカスした製品を用意。それぞれのワークロードごとに最適なサーバ、ストレージ、ネットワーク、アプリケーションを統合し、ワンストップで提供できるようにした。これにより、ユーザーは必要なアプリケーション稼働環境を迅速かつ低コストで導入することができ、TCOの削減にも貢献するとしている。
橘氏が冒頭の発言で語った業界標準の技術とは、ソフトウェアではSAP、Citrix、VMwareなどのパートナー企業が提供する製品、ハードウェアではHPのx86サーバを指す。ConvergedSystemの詳細な内容については関連記事を参照いただくとして、今回の発表で非常に興味深かったのは、同社がConvergedSystemを「垂直」でない統合型システムだと主張していたことである。
垂直統合型と統合型はどこが違うのか
ここ数年、大手システムベンダーがこぞって市場投入してきたハードウェアとソフトウェアを一体化した製品は「垂直統合型システム」と呼ばれ、複雑化するITシステムへの対応策として注目されてきた。一方で、システムベンダー固有の技術が色濃く反映されることから、ユーザーにとってはベンダーロックインされるのではないか、との懸念が指摘されている。
橘氏はそうした状況を踏まえ、「このところの顧客ニーズをみると、ITシステムについてはハードウェアよりもミドルウェアやアプリケーションといったソフトウェアが重視される傾向が一段と強まってきている。とはいえ、ハードウェアがベンダー独自の技術に基づくものならば、それはベンダーロックインに陥りかねない。その点、ConvergedSystemはハードウェアもソフトウェアも業界標準の技術を適用していることから、統合型ながら垂直ではない。したがってベンダーロックインになるとは考えていない」との見解を示した。
振り返ってみると、Oracleの「Exaシリーズ」が注目を集めたことで垂直統合型システムという言葉が広く知られるようになったが、他のベンダーの同類製品をみると、むしろ今回のHPと同じく垂直でない統合型システムが少なくない。そう考えると、今回のHPの発表は垂直でない統合型システムを4つのワークロードにフォーカスした製品としてラインアップしたところに注目すべきだろう。
メディアもこれまでハードウェアとソフトウェアを一体化した製品を、すべて垂直統合型システムと呼んできたかもしれない。だが、垂直か垂直でないかは同じ統合型システムでも基本的なコンセプトに違いがある。自戒も込めて、今後は混同しないようにすべきだろう。