世界の経営層が考える今後3~5年の戦略
大規模な経営者調査「IBM Global C-Suite Study 2013」についての第2弾リポートをお届けしたい。
今回も、経営コンサルタントでループス・コミュニケーションズ代表取締役社長の斉藤徹氏とともに、日本IBMの戦略コンサルティング パートナーの池田和明氏との対話を通して「未来を知るためのレポート」を読み解いていく。
前回の記事では、世界的に「顧客のパワー」が増大しており、最高経営責任者(CEO)をはじめとする経営陣がそれを強く意識していること、そのために「新しい顧客接点」の構築、さらに「魅力ある顧客体験」の提供に注力していることが明らかになった。今回は、それをさらに一歩踏み込んで、顧客接点や顧客体験の未来を考察していきたい。
オムニチャネル構築におけるソーシャルメディアの存在感
まず、斉藤氏が着目したのは、最高マーケティング責任者(CMO)への「注力していきたいデジタル戦略」に対する回答だ。
図11 「デジタルへの熱望」
「世界のCMOは、直近では『ソーシャルネットワークを活用したコラボレーション』を最も意識しており、今後3年~5年というスパンでは『クロスチャネルの統合』、つまりリアルとデジタル双方の顧客接点を統合するオムニチャネルの構築を意識していることがわかります。
具体的に言うと、リアル店舗、カタログ通販、ショッピングモール、自社のPCサイトや携帯サイト、ソーシャルメディアといったあらゆる顧客接点から、同じ利便性で同じ商品を購入できること。
在庫情報はもちろんのこと、問い合わせや返品などの顧客体験も統一されていること。彼らは、近い将来、そのような統一された顧客体験を提供することを目指していることがわかります」
日本IBMの戦略コンサルティング部門をリードする池田和明氏
これに対して池田氏は次のように話す。
「こうした傾向はCMO以外のCxOにも広がっていますね。約8割の最高情報責任者(CIO)がフロントオフィス、つまり顧客接点の情報システムを今後2年~3年以内にデジタル化する計画があると答えています。
ただ「リアルとデジタルの統合」について具体的なチャネル戦略をもっている企業はわずかに全体の3分の1です。多くの企業では事業戦略とデジタル戦略がバラバラなのです。最大の原因は、ソーシャルメディアの活用に踏み込めていないことと考えられます」
図12 「リアルとデジタルの統合における阻害要因」
63%の企業がソーシャルメディアの適正な活用について悩んでいる。企業の中で働く社員は、ソーシャルメディアから多くの情報を得て仕事に生かしているはずだ。それだけではない。彼らは顧客としても行動している。ネットの情報をもとに実店舗でものを購入したり、実店舗で見た商品の価格をネットで調べたりしているだろう。しかしながら、いざ企業サイドにたった戦略となると、一転して遅々として進まない。なぜだろうか。