その理由を斉藤氏はこう語る。
「意思決定者であるエグゼクティブが傍観者となってしまうことが大きな理由です。経営者はソーシャルメディアの重要性はきちんと認識していますが、ユーザーとして経験していないためにその本質を理解できないのです。この結果は2012年の調査でも大切なテーマとなっていました。今や、テクノロジと経営は切り離せません。テクノロジの変化に敏感なことは、高業績企業のひとつの特徴といえるでしょう」

図13 「リアルとデジタルの戦略を統合した企業」
池田氏も斎藤氏の意見に同意する。今回の調査によれば、高業績企業(注) の方になるほどリアルとデジタルの統合戦略を策定しており、ソーシャルを企業戦略とブランディングの中核に置こうとしているという。高業績企業のCxOは、テクノロジ進化の傍観者になるのではなく、自らが業界におけるイノベーションの先駆者になろうとしているのだ。
(注 当調査において、高業績企業とは『経営層自らが売上成長率と収益性の両面で同業他社よりも優れている』と自己評価している企業をさし、全体の8%存在している。低業績企業は、逆の自己評価をしている企業であり、全体の25%存在する。)
「リアルとデジタルの統合」に出遅れる日本のCxO
世界企業のリアルとデジタルの統合指向を見てきたが、日本のCxOはどうなのだろう。実は、今回の調査で日本企業のCxOは631名、全体の約15%と重要なポジションを占めている。
斉藤氏は日本と世界の各CxOの違いが出ている部分を指摘する。
「日本企業は伝統的に顧客を大切する傾向にありますが、それがこの調査にも表れています。例えば「企業に対する顧客の影響力は大きい」と考えている日本企業は76%と世界平均の54%を大きく上回り、優先度を高めていきたい領域でも『顧客体験の変革』を挙げているCxOが平均よりも高いですね。一方で、事業戦略とデジタル戦略が統合されている企業の比率は、世界平均の36%に対して、日本企業は24%にとどまっています。僕たちが意識すべき課題点ですね」

「CxO デジタル戦略の成熟度」