モバイルファーストという不可逆

フィールドワークで使うスマートデバイス--導入のポイントと運用 - (page 4)

千葉友範(デロイト トーマツ コンサルティング)

2014-05-30 07:30

管理者の視点

情報漏えいリスクは盗難防止も踏まえて検討

 ラグド端末の場合であっても、普段から端末の傾向を想定する場合には、セキュリティ環境を構築する必要がある。最近注目を集めるモバイルアプリ管理システム(Mobile Application Management:MAM)は、個人のスペースと業務のスペースを物理的な環境と分けることができる。

 例えば、施工管理、点検や保守といった業務の場合、個人情報を扱うことは少ないかもしれないが、点検などのチェック項目や現場写真といった情報そのものが機密情報であることもあり、こうした情報が競合他社に漏れることは絶対に抑止しなければならない。

 企業によっては、社給端末として貸与しているが、場外に端末を持ち出すことができる(業務用端末として社外でもメール閲覧や業務文書の閲覧が可能)ため、業務用アプリは仮想化されており、点検や保守などの業務アプリを起動できるのは特定のWi-Fi環境下のみというように徹底することで、盗難や紛失のリスクに備えている企業もある。

コストメリットはリテラシー教育が重要

 もともと、ラグド端末を利用しようとする環境では、端末そのものは雑に扱われることが多い。こうした状況にもある程度耐えられるように、ラグド端末側も雑に扱われても傷がつきにくく、コンクリートに何度打ち付けられても耐えられる合成サファイアのスクリーンを搭載させたり、防塵、防水などを具備した端末仕様のものをリリースしたりしている。しかしながら、これでも物理的にデバイスを100%保護できるということではないため、ユーザー自身には、デバイスを丁寧に扱うようリテラシーレベルの向上を促し、教育することが重要である。

ネイティブかウェブか

 われわれもよく、業務用のアプリ開発はネイティブアプリか、ウェブアプリかどちらで開発するべきかを相談される。正直悩ましい質問だが、これもデバイスの選定と同様に、利用環境によって大きく異なる。ネイティブもウェブもどちらも、一長一短があるため、どちらが良いとは言い難い。例えば、ウェブアプリの場合、プログラムをひんぱんに更新し、多様なプラットフォームで動かすことが求められるような環境であれば、有効に機能するだろう。

 しかし、ネイティブアプリに比べて、動きが悪い場合や、カメラやセンサなど、モバイル端末に内蔵されている部品を操作できないケースもある。さらには、フィールドワークの場合、そもそも通信ができない環境下での利用も想定しなければいけないケースもある。最近では、ハイブリッド型で開発するケースが増えてきているため、何を選択するのかは、利用環境による。

まとめ

 フィールドワークにスマートデバイスを活用することは、現場の生産性や安全性、品質向上といった観点からも有効であり、多くの事例がある。しかしながら、その裏では多くの苦労と失敗があることも事実である。

 フィールドワークへのスマートデバイス導入は、これまで紹介してきたように、グランドデザインの設計、ロードマップの設計、ペルソナのデザインが重要だ。

 フィールドワーク固有の状況としては以下の点が特に重要になってくると言え る。

  1. 小さくはじめて、早く成功体験を積み重ねる
  2. 利用環境によるデバイスの選定を慎重におこなう
  3. ユーザー自身のリテラシー教育を行う
千葉 友範
デロイト トーマツ コンサルティング マネージャー
大学院在籍中にIT系ベンチャー設立に参画を経て現在に至る。業務改革プロジェクトを中心に実施し、近年では、デジタルデバイスを活用したワークスタイルチェンジや販売力強化など、戦略策定から実行支援までプロジェクトを多数実施。「会社で使う タブレット・スマートフォン2013」など執筆多数。

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