--Eコマースツール「SuiteCommerce」の拡張で、オンラインとオフラインの販売チャネルを統合する「オムニチャネル」をメッセージとして押し出しています。
オムニチャネルについては、ある意味で市場ニーズがNetSuiteに追いついてきたものだとも言えます。もともとNetSuiteは企業のデータをすべて取り込むという形に、シンプルに作ってきました。これにより、オムニチャネルを実現するための土台がすでにあったということになります。
オムニチャネルのチャレンジは、コールセンターやウェブ、POS(販売時点管理)などシステムをチャネルごとに作ってきてしまったことです。結果、サイロ化してしまい1人の顧客を把握するのが難しいのです。単一のバックエンドからデータをとってきて、それを多様なフロントエンドに流す。これができるのが、クラウドのサービスではNetSuiteだけなのです。だからリテールの世界で注目されています。
NetSuiteの中には、受注の情報があります。これが顧客情報の核になります。その結果、今ではリテールだけでなくさまざまな業界からも注目されています。CRM(顧客情報管理システム)のSalesforce.comだけでは、オムニチャネルを実現するのは無理です。なぜならば、Salesforceの中には、受注の情報がないからです。ここで、最初に話をしたLarryとEvan、Markの会話に戻るわけです。まずは、ERPの仕組みを作るべきだという。
Larryは日本通としても知られています。彼は、日本の文化が大好きです。日本の文化には長期的な視野で物事を見るというのがあると思います。15年前の会話の中身が、今になって生きてきているということだと思います。
--日本ではクラウドのERPのシェアは1割にも満たない状況です。グローバルの状況はどうなっていますか。
グローバルでもERPをクラウドにというのは、難易度が高いものとの認識があります。とはいえ、今後クラウド化を考えている人の割合も最近では大きく増加しています。大企業では2層型、つまり本社はオンプレミスのERPで海外拠点などにクラウドERPを導入するという形が注目されつつあります。これはNetSuiteにとっては、喜ばしい状況の変化です。
Gartnerのレポートにおいても、2013年にはファイナンシャルアプリケーションのトップ10ベンダーにNetSuiteが入りました。トップ20までの中に、他のクラウドERPはありません。さらに、トップ10の中でも最も成長率が高いのがNetSuiteです。ERPは成熟した市場ではありますが、動きはあります。今後20年のうちには、すべての企業がクラウドERPに移行すると私は考えています。それは、クライアントサーバの前がメインフレームの時代だったことでも明白です。今となっては、戦略的なシステムでメインフレームを使っているところはありませんよね。
--ところで、今でもLarryからはアドバイスはあるのですか。
ネットスイートはでビジネスアプリケーションでは競合しますが、データベースはOracleから購入しています。こういう状態を「コンペティション」と呼んでいます。協力するところは協力しますが、今後もビジネスアプリケーションのところでは他社と競合することになるでしょう。
創業した当時はLarryからよく電話がかかってきましたが、NetSuiteが成長した今は私からLarryに電話することが増えました。とはいえ、NetSuite、という企業が必要に応じLarryから意見をもらえる立場にあるというのは、株主からも価値があることだと思われています。