クラウドの領域でもオープンソースソフトウェア(OSS)が重要な位置を占めようとしている。IaaS環境構築管理ソフトウェア「OpenStack」とPaaS基盤ソフトウェア「Cloud Foundry」を活用するケースが増えているからだ。
先頃Hewlett-Packard(HP)が米国で発表したクラウドの統合ブランド「HP Helion」でも、OpenStackとCloud Foundryが重要なポイントとなっている。日本ヒューレット・パッカード(日本HP)が5月21日に開催したHelionの説明会でそのことが見えてくる。
HelionはHP全社でクラウドに関連する製品やサービスをまとめた統合ブランド。新ブランドではデータセンターの世界展開とともにOpenStackとCloud Foundryに関連する製品やサービスの拡充を進めていく。今後2年間で10億ドル以上を投資するという。
日本ヒューレット・パッカード 執行役員 エンタープライズグループ事業統括 エンタープライズグループ営業統括 クラウド営業統括本部長 松浪幹生氏
米Hewlett-Packard クラウドテクノロジストグループ 技術担当部長 真壁徹氏
「全てOpenStackベースの共通アーキテクチャとすることで、これまで進めてきたハイブリッドクラウド戦略を次のステージに成長させることができる」(日本HP 執行役員 エンタープライズグループ事業統括 エンタープライズグループ営業統括 クラウド営業統括本部長 松浪幹生氏)だとアピールしている。
OpenStackとCloud Foundryの関連製品を拡充
米Hewlett-Packard クラウドテクノロジストグループ 技術担当部長の真壁徹氏がHelionの詳細を説明した。真壁氏は2013年11月にスタートした新年度から新設されたクラウド事業の組織に所属。日本専任だが、所属は米本社になっている。
「クラウドは技術進化が速く、米国発信で生まれる技術が多い。それをダイレクトに日本の顧客に伝えることを目的に、米国本社所属という組織形態となっている。日本専任担当者として、日本の顧客からの声を本社にフィードバックする役割も担っている」(真壁氏)
Helionは、従来からHPが推しているパブリック、マネージド、プライベートという3つを適材適所に利用するハイブリッドクラウドをOpenStackという共通アーキテクチャで提供。次の3つの価値を提供できるという。
- Open=オープンスタンダード、エコシステムが提供する豊富な選択肢と、進化し続けるOSSを活用することでイノベーションを促進
- Secure=HPがOSSを責任を持って強化、サポート。知財侵害訴訟でも保護。複数の環境でもエンドトゥエンドでセキュリティを確保し、標準化と可視化で統制を容易に
- Agile=リソース提供までのスピードを短縮し、ビジネスに貢献。プログラムからAPIで制御可能なリソース。規模の経済を活かし、迅速かつ低コストで提供
OpenStackディストリビューションとして、HP自身が公開し、無償で利用できるOSS版の「HP Helion OpenStack Community」に加え、HPが提供する商用版の「HP Helion OpenStack」も提供する。Helion OpenStack Communityはすでにプレビュー版を公開済みで、6月から正式版を公開する予定。Helion OpenStackはプレビュー版を6月に、正式版を8月に公開する予定だ。
Helion OpenStackはエンタープライズ版、サービスプロバイダー版の2つがあり、HPがパブリッククラウドの運用を通じて得た実績とノウハウ、1000台の物理サーバを超えるような環境に耐えうる拡張性、外部のシステムとOpenStackとの連携などを付加価値として提供していくという。HP以外のハードウェアでも利用できるが、HPのハードウェアに最適化し、「他のハードウェアを利用するよりも楽に利用できる」(真壁氏)
システム構築では、技術者を提供する「HP Helion プロフェッショナルサービス」も提供する。Helion OpenStackベースのクラウドサービスとして、18カ月間で日本を含めた20の地域へ配備することも計画している。
PaaSでは、Cloud Foundryをベースとした統合フレームワークと実行環境である「HP Helion Developer Platform」を提供する。Javaや.NET、Python、Ruby、PHP、Node.jsをサポート。MySQLやRabbitMQ、memcachedもサポートする。クラウドネイティブなアプリケーションの作成を支援する環境を2014年後半に提供する。ユーザー企業にとっては、可用性や拡張性が高いアプリケーションを迅速に開発できる環境となる。
こうした新しい施策に加え、「これまで培ってきたパートナーエコシステムはこれまで通り。日本の顧客によく聞かれるが、パートナーと一緒にビジネスをしていくというこれまでの戦略には何にも変わりはない」(真壁氏)とパートナーとの連携については従来通りだと強調している。
OSS版のHelion OpenStack Communityと商用版のHelion OpenStackの関係