灼熱の夏のマニラで、アイスクリームにまつわる最高の楽しみの1つは、普段は味わうことのできない新しい「ホットショットフレーバー」を試すことだ。
「塩キャラメル」に「ブラジルコーヒー」、「麦芽乳」あるいは「エッグノッグ（牛乳に卵と砂糖を加えた飲み物）」フレーバーのアイスクリームなど、今まで聞いたことがあるだろうか。あるかもしれないし、ないかもしれない。
だが、フィリピンの起業家であるFrancisco D. Magsaysay氏が、彼が作った「ピスタチオ」フレーバーを試してみるように目を輝かせながら勧められた顧客は、マニラ一のアイスクリームを味わい、Magsaysay氏をさらに信頼することになる。大きな理由の1つは、同氏の売り出すアイスクリームが、提携先の農場で採れた純正牛乳のみを使っている点にあるだろう。
Carmen's Best Ice CreamのCEO、Francisco D. Magsaysay氏
Magsaysay氏は、子どもの頃から家でアイスクリームを作るのが大好きだった。彼は米国へ行き、ペンシルバニア州立大学でアイスクリーム製造の短期コースまで受講したという。今では、それが彼の確固たるビジネスになっているのだ。
「大事なことは、どう利益を確保するかというよりも、『お客様に提供したいものは何か』、そして『アイスクリームはどうあるべきか』なんです」と、同氏は語る。
新フレーバーの「ピスタチオ」アイスクリームに話を戻すと、Magsaysay氏は、商品に空気を入れたり、水を混ぜたりはしないという。純粋で高価なピスタチオだけを使うのだ。この点は、彼のビジネスにとって、2番目に重要なことだ。つまり、品質への近道はなく、最高の素材に替わるものはないのである。
「私たちの利益は小さく、コストも高い。しかし、ビジネスは1年目から成長し続けています」と、同氏は語る。
フィリピンの政治家の家系の御曹司でもある同氏が、アイスクリームビジネスで成功したカギも、この点にあるかもしれない。フィリピンは、乳製品の98％を輸入に頼っているが、彼の一家がBayに保有するLaguna酪農場は、高品質の乳製品を生産し、地元産業に貢献しているのだ。同氏のアイスクリーム・ブランド「Carmen's Best Ice Cream」のコンセプトは、同農場で採れた新鮮な牛乳と乳製品から生まれた。
Carmen’s Bestは、2011年2月に創業したばかりだが、アイスクリームを愛する人びとの間で、予想以上の勢いでファンを増やしている。Magsaysay氏は早くも、輸出市場を既に視野に入れ、上質なアイスクリームをフィリピン国外の市場に拡大する計画を進めている。
同ブランドは30種類以上のフレーバーのアイスクリームを販売しているが、Magsaysay氏によれば、まだ量産できる状態ではない。「私たちは、不特定多数のアイスクリームを恒常的に生産するのではなく、販売業者の注文があってから生産しています。品質を保つためです」と、同氏は語る。
ただし、増え続ける販売業者のリストは、同ブランドの品質が評価されている証でもある。Makatiの中心商業地区にあるSalcedoビレッジのLeviste通り沿いだけでも、現在3つの販売業者がCarmen's Bestを取り扱う。1軒はスクープ単位で、もう一軒はパイント単位、そして残りの一軒はカフェメニューの1つとして販売している。ビストロや高級食材店、ショッピングモールのレストランや近隣でも、同社のアイスクリームが販売されている。
Magsaysay氏はすでに、販売網の効率化に向けた方法を模索している。同社は、フィリピン初の小売業者の1つとして、Globe Telecomの店舗販売向けPOSシステムのモバイルソリューション「Globe Charge」を新規導入した。
