プライバシーと個人情報
ところで、プライバシー保護と個人情報保護は同じでしょうか。
同じような文脈で語られることが多い、この2つの保護方針はその侵害というところで考えると別であると判断したほうが良いかもしれません。
プライバシーというのは個人の権利です。ですから各々がプライバシーを主張をした場合には、その権利を優先する必要があります。極端に言えば、どんなに安全管理をしていても個人がそれを不快に思ったり、不安に感じたりすればプライバシーは十分に保護されていないとも考えることができるのです。
一人ひとりへの対応ということでこれは非常に手間のかかる取り組みになりますし、どこまでやってもすべての方に満足をしていただけるものを提供するのは難しいということになります。
つまり、プライバシー保護は情報セキュリティではなく、顧客満足の分野に近いと考えることができます。情報セキュリティのトレードオフの方向で考えているとプライバシー保護は破綻してしまいます。利用者に有用なサービスを提供する一方で、どの程度のプライバシー提供について許容してもらえるのかを考えることが重要だといえます。
ユーザーへのコミュニケーションなくしてプライバシー保護はあり得ません。何かの基準を満たしているからプライバシー保護を全うしているという考え方では顧客満足を得ることはできないのです。
同様に個人情報保護法についても、個人情報を提供された個人の苦情から対応が始まります。苦情がないように情報を安全に管理し、自己のコントロール権を全うするような窓口や体制を構築しておくことが重要です。
個人情報の安全管理とは漏えいしないように管理することだけではありません。個人情報が適切に利用できるようにしつつ、漏えいや権限のないものによる利用がないように管理することです。もしも利用しないのであればそれは、破棄してしまえば良いのです。破棄できないということはなんらかに情報を利用するということですから、利用方法に本人の意向を尊重することができればいいということになります。
個人情報の保護や管理は情報セキュリティの分野です。誰もが同じように個人情報について判断し、適切にご本人の意向を尊重するための仕組みづくりはどのように進めればいいのでしょうか。