カリフォルニア州の農業経済は年間436億ドル規模だ。同州では、米国産の果物、ナッツ類、野菜の半分近くが生産され、400種以上の農産物が育てられている。同州の輸出高も過去数年間、一貫して増加しており、2012年には180億ドルに達した。
同州では深刻な渇水も進みつつある。同州の水源の3分の1近くは雪塊であるが、現在、この雪塊の量は通常レベルの20%程度のところを推移している状況だ。貯水池は貯水量が乏しくなっており、農村部のコミュニティーは貴重な水源が完全に枯渇する可能性があるという警告を受けている。
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提供:Parrot
これはカリフォルニア州にとっては良いニュースではない。同州の農家は、家畜の数を減らしたり、耕作をあきらめたり、値上げをしたりといった対応を強いられている。カリフォルニア州はアボカドの生産では米国1位、アーモンド生産では世界1位だが、こうした作物の価格と需要が毎年のように急増し続ければ、厳しい決断をすることになる。
Intelは、大規模な食糧安全保障問題の解決のためにビッグデータを活用する動きを進めており、手始めとして、カリフォルニア州の問題に取り組んでいる。同社は、短期プロジェクトを通じて、研究イニシアチブとデータアクセスを拡大しているところだが、長期的には、世界中の科学者がアクセスできる、信頼性の高いリファレンスプラットフォームを構築したいと考えている。
Intelのクラウドアナリティクス部門の戦略およびビジネス開発担当ディレクターのVin Sharma氏は、「われわれは、重大な問題のためにビッグデータ分析ソリューションを応用している。誇張して言っているのではなく、世界の姿を変える規模の問題を解決しようと取り組んでいる」と述べている。
ビッグデータとモノのインターネット(IoT)は、世界が今後数年のうちに直面することになる課題への対応において、大きな役割を担おうとしている。米国政府が、気候変動データを一般公開するとともに、テクノロジを使って解決策を生み出すコミュニティープロジェクトを推進しているのはそのためだ。食糧、耕作地、水に対する需要が急速に高まる中で、われわれの世界が直面しようとしている問題についての知識が重要になる。
カリフォルニア州の未来におけるIntelの役割
「現在の科学やビジネスの大きな課題を解決するために、『なぜ今このようなことが起きているのか』という疑問を投げかけるのが、Intelのアプローチだ。広い意味で言えば、われわれはテクノロジの民主化に取り組んでいる。比較的高度で、限られた人々だけが利用できたものを、より多くの人々が利用できるようにしてきた」(Sharma氏)
米国内のIntel Science and Technology Centers(ISTC)と、米国外にあるIntel Collaborative Research Institutes(ICRI)はいずれも、少なくとも部分的にはIntelから資金を受けており、Intelと同社を取り巻くアカデミックコミュニティーの間の研究協力の役割を果たしている。大学側は自らが取り組むべき課題を選び出し、Intelはリソースと大局的なコンセプトの面を支援する。
カリフォルニア州での雪塊の融解に対処するために、Intelはカリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)のEarth Research Instituteと協力して、Earth Databaseによるプロジェクトの研究と開発を行っている。研究者らは、衛星画像とマッピングテクノロジを使用して、シエラネバダ山脈の積雪パターンを測定している。最終的な目標は、カリフォルニア州で将来的に利用できる水の量を把握することだが、その手法はどんな地域でも使用できるものだ。
Intelはこのプロジェクトで、1カ月に20テラバイト以上のデータを収集しており、それを拡大し続ける計画だ。収集されたデータはUCSBの機関に送られて、そこで研究コミュニティーの科学者に広く公開される。このプロジェクトはまだ研究段階にあるが、Intelは、政府や大学、科学者が利用できる画像データベースを構築したいとしている。
このプロジェクトが始まるまで、科学者は雪塊のある地域まで危険を冒して出かけて行き、手作業で水位を測定する必要があった。Intelは、業界全体が利用できるアプリケーションやモデルを増やせるように、より多くの参加者や科学者にデータベースにアクセスしてもらいたいと考えている。現時点では、テクノロジ自体の開発を推進することが優先事項だとSharma氏は語る。その上で、Intelはプロジェクトの拡大に取り組む予定だ。Sharma氏は、将来的には、この取り組みが、コミュニティーも関与する市民科学プロジェクトのようなものになることを願っていると述べた。