不確実性に対処するにはアジャイルやクラウドが不可欠:アマゾンCTO - (page 2)

齋藤公二 (インサイト)

2014-07-19 08:00

安く失敗する、早く失敗する

 NTTドコモの栄藤氏は「規模の大きな企業でもアジャイル開発ができることを示せた」と同社のAWS活用のポイントを語った。2010年時点ではウォーターフォール型で開発していたが、音声認識サービス「しゃべってコンシェル」の展開にあたり、AWSを採用した。採用の理由の1つとして「先が見通しにくいサービス開発でもウォーターフォール型で行っていた。こうした慣習を変えたかった」ことを挙げた。

栄藤稔氏
NTTドコモ 執行役員 研究開発推進部 部長 栄藤稔氏

 しかし、データセンターを借りて、従来と同じ手法を使っても、何も変わらない。そこで、開発手法を変えてマインドセットを変えた。結果として「安く失敗する、早く失敗するといったように、失敗に備えてデザインできるようになった。またベンダーとの責任共有モデルで開発できるようになった」という。

 現在は、ウェブ系だけでなく、業務系システムやミッションクリティカルなシステムにも適用範囲を広げている。具体的には、データウェアハウス(DWH)サービス「Amazon Redshift」を使った分析基盤の構築に取り組んでいるところだ。

髙野清氏
エイチ・アイ・エス 執行役員 本社 情報システム本部 本部長 髙野清氏

 エイチ・アイ・エスの髙野氏は、AWSを海外での訪日プロモーションの基盤に活用している事例を紹介した。取り組みを始めたのは2012年。サービス業ということもあり、IT部門の規模は小さかったが、事業はグローバル展開しているため、海外に人材を派遣して現地のサービスを立ち上げざるを得ないことも多かった。

 旅行代理という季節性の高い事業ということもあり、通常時にリソースが余ったり、繁忙期にリソース不足に陥ったりしていた。「何より大事だったのはスピード。ビジネスの展開にITが付いていかず、新しいことにチャレンジできなくなっていた」(髙野氏)という。

 そこで、2012年から外部接続がなく静的でファイルで構成されたサービスからAWSに移行するテストを始めた。当初の懸念はネットワークだったが、専用線接続サービス「AWS Direct Connect」で直接接続して安定的なネットワークを構築できたことで、それを払拭した。

 2014年からはECサイトでの利用や、老朽化システムのリプレースでAWSを採用し「まずAWSで考える。AWSでやれない場合はほかの手段を考えるといった姿勢で取り組んでいる」までになった。2015年には海外拠点システム、2016年には国際災害復旧(DR)対策にも活用する計画だという。

松本大氏
マネックスグループ 代表執行役社長CEO 松本大氏

 マネックスの松本氏は、金融業でのミッションクリティカル領域での活用事例を紹介した。同社は、日本や米国、香港などの証券取引所で取引しており、世界150カ国に向けてサービスを展開するグローバル企業だ。システムは金融機関として責任をもってサービスを継続できるよう内製化を基本としている。

 「刻々と変わる約4000銘柄の日本株の情報を提供する、ミッションクリティカルなサービスをAWS上に構築している。約100万人の顧客にサービスを提供する基盤を作るにはスピードが優先される。また、株価情報は判断の差が大変大きいため、利用される場合とそうでないときの差も大きい。グローバル対応、スピードへの対応、スケールアップへの対応、そういった条件からAWSを選択した」という。

 「金融はもともとイノベーティブな業界だったが、最近は金融のテクノロジからイノベーションが起こっていない。AWSを使ってイノベーションを起こしていきたいという気持ちも強い」(松本氏)

喜連川優氏
東京大学教授で国立情報学研究所 所長の喜連川優氏

 最後に登壇した喜連川氏は、日本の大学や研究機関を結ぶ学術情報ネットワーク「SINET」にAWSを追加したことを紹介した。国立情報学研究所は、SINETの運営元であり、SINETには現在、国内779機関が接続されており、米「Internet2」や欧州「GÉANT」などの学術研究ネットワークとも相互接続している。

 これまでの利用例としては、スイスにある、欧州原子核研究機構(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)の高エネルギー陽子衝突反応測定器(ATLAS)からのデータを国際回線で東大に転送したり、チリのアタカマ砂漠に設置した66台の電波望遠鏡(Atacama Large Millimeter/submillimeter Array:ALMA)からの天文データを国立天文台まで転送したりといったケースがある。

 クラウド事業者のデータセンターをSINETに接続することで、高速で安全なクラウドの利用につながるとし、これまで、国内10事業者が接続サービスを提供している。AWSは新たにここに加わったことになる。

 喜連川氏は「学術分野でクラウド活用することは、研究者の負担を減らし、学術の進展速度をブーストできるだけでなく、研究のスタイルそのものを変えるものだ」と主張。現在は論文だけを共有しており、論文に至るまでの中間結果は共有されていない。

 どんなデータ、どんなプログラムを使っているかを確認できるようにし、結果をソーシャルリーディングで精査できるようにする。そうした健全な研究環境の提供、そして研究だけでなく教育の場にも応用していきたいと話した。

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