IBMがAppleとエンタープライズ分野で大規模な提携を結んだ主な動機の1つは、コグニティブ(認知)コンピューティングと「Watson」のために、モバイルとクラウドの開発者エコシステムを構築することを中心としているのかもしれない。
2週間前、IBMとAppleは、エンタープライズ分野での幅広い提携を発表した。この提携の下、IBMは業界に特化した「iOS」アプリを開発する。さらに、この提携には、サービスやサポート、モバイルデバイス管理も含まれている。Appleは、自力では得られなかったエンタープライズ分野での活動能力を、IBMとともに実現する。IBMはAppleの重要なパートナーと、モバイルに関する取り組みへの助けを得ることになる。
しかし、IBMにとっての本当のメリットは、Appleの大規模な開発者ベースを利用できるようになることかもしれない。Appleの最高経営責任者(CEO)であるTim Cook氏は、IBMとAppleの提携の一部は「iOSユーザーがビッグデータアナリティクスをすぐに利用できるように」することを軸としていると述べた。
IBMは、Watson事業部門を設置するために10億ドル投資するという、アナリティクスでの大きな賭けに出ている。この部門は、コグニティブコンピューティング、つまり学習し、適応するシステムへの取り組みの先頭に立つことになる。Watsonに適した垂直市場の1つがヘルスケア分野であることは明らかだが、IBMはさらに多くの業界をターゲットとしている。
問題は、開発者ベースを構築するのが難しいということだ。IBMはWatson向けのアプリを開発しているスタートアップに投資しているが、開発者の獲得は大変だ。モバイル向け開発の大半の時間がiOSと「Android」のために使われ、「Windows Phone」が3番目であるような状況では、特にそうだ。IBMが素早くモバイルやクラウド分野の開発者を獲得して、Watsonプラットフォームの開発作業をさせることは本当に可能だろうか。
おそらく不可能だろう。
Appleが加わるとどうなるだろうか。iOSの開発者は、Androidの開発者よりも売上高が多く、全体としてアプリをよりうまく動かしている。結果的に、iOSバージョンのアプリが先にできて、Androidバージョンが後になっている。エンタープライズ向けアプリの大手企業も、コンシューマー向けの開発者と同じように、まずiOS向けアプリから開発している。
IBMは、本当にWatsonを主力製品にするつもりなら、こうした開発者が必要だ。Appleとの提携によって、IBMが開発者からの視線を集めることになるのは間違いない。IBMのアナリティクスツールのうちのどれがiOSに組み込まれるのかは明らかではないが、開発者は、IBMが求めている、Watsonエコシステムへの手助けになるかもしれない。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。