山谷剛史の「中国ビジネス四方山話」

中国人の本音「こんな上司は嫌いだ!」

山谷剛史

2014-07-29 07:30

 「職場で起きた酷い刑」という投票が、求職サイト「前程無優(51job)」の掲示板で行われた。複数回答可能な投票の結果は、上位から「上司がひどい。同僚がおかしい(67%)」「仕事あがり直前に仕事を渡された(58%)」「ボーナスが全くない(57%)」「毎日残業(44%)」「休ませてくれない(33%)」「1日中会議(28%)」「通勤電車が混みすぎる(23%)」「午後、睡魔に襲われる(22%)」「何にもない郊外に職場が立地(19%)」「QQや淘宝網や優酷(18%)」「社内食堂の食事がまずい(13%)」となった。

 「職場の食事がまずい」というのは許せる人が多いらしい。「午後、睡魔に襲われる」というのは自己責任だ。「通勤列車の混雑」や「職場の立地」は入社前から知っていることで、これもまた自己責任といえる。ちなみに通勤の大変さを「Bus」「Metro」「Walk」の頭文字をとって「BMW」とも言う。「QQ」などのインスタントメッセンジャーや、淘宝網(TAOBAO)などのオンラインショッピングサイトや、優酷網(YOUKU)のような動画サイトを職場で見てはいけないというのは、職場で公私混同(前回記事を参考に)をする彼らからすれば苦痛だが、まだ許容できるようだ。

 「上司がひどい。同僚がおかしい」「退社直前に仕事を渡された」「ボーナスが全くない」「毎日残業」「休ませてくれない」「1日中会議」というのは、「同僚がおかしい」ことを除けば、結局のところいずれも予想以上に酷い社長・上司の方針に集約される。気に入らなければすぐに転職する中国人はステレオタイプといえるほどよくいて、給料が低いからというのがよく挙がる理由ではあるが、上司や社長が原因で会社に嫌気がさす人もなかなか多いのである。

 日本の企業では、特にIT系ベンチャー企業で「フラットな社風」が見られるが、中国の企業では、小企業を中心に社長のワンマン経営を多く見かける。自身のプロジェクトを成功させるため、社員と共に汗水たらすのは日本と同じ。しかし、人と人との信頼がない中国の社会環境ゆえに、社員を信用しない経営者は多い。勝手に仕事を奪ってしまうのではないか、などと疑心暗鬼なのだ。

 社長は手足のように社員を働かせたい。されど社員は信用がおけない。そうすると、社長は会議などでプロジェクトの全体像を見せないまま、社員にプロジェクトの一部の作業を依頼する。社員としては、社長が何をしたいかがわからないから、正確なアウトプットができない。そうすると雑な結果しか出なくなる。そもそもの段階で、社員は今どのようなプロジェクトが社内で部内で走っているのかわからないまま、日々作業をこなすことになる。社長は自身の問題には気づかず、希望するアウトプットを出さない社員を無能と思い込むという悪循環に陥る。

 定時に帰らせてくれるならまだいい。社長が日中コネづくりの営業に出て、夕方に帰社しては、社員の退社時間の直前に目標不明の仕事を渡すケースはよく聞く。公私を混同し、夜だろうが休日だろうがメールやチャットで仕事を依頼して強制する困った社長も多い。社員は、見えないスケジューリングの中で、手探りで仕事をこなすわけだ。社長・上司の公私混同の話ではほかにも、「遠方に住む社長の家族がやってきたとき、その土地の観光案内や世話係をする」「ペットを社内に連れてきて世話をさせる」「エアコンの風が社長だけに当たるように設置され、夏も冬も厳しい」など様々な例がある。

 中国では「サラリーマンより経営者」志向の人が多い。中国における経営者と社員の所得差は日本の比ではないが、金銭面だけでなく、傍若無人の社長を見聞きすることでも、「人の下で働きたくない」という意思が形成される。

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