7億8000万人、つまり世界の9人に1人が、清潔な飲用水が手に入らない状況で生活していることをご存じだろうか。そして、毎年340万人が水に関係する病気で亡くなっている。これらの統計を見て、間違って水道を出しっ放しにしたり、シャワーを長く浴びすぎたり、飲みきらなかったペットボトルの水を捨てたりしたことを思い出す人もいるだろう。
水の安全に関する問題は、飲用水の入手だけではない。これは、公衆衛生の問題でもある。世界には、トイレを持っている人よりも携帯電話を持っている人の方が多いのだ。しかし、米国環境保護庁(EPA)によれば、米国人の水の用途で最も多くの水を無駄にしているのは、トイレで水を流すことだ。またこれは、気候変動の問題でもある。解ける氷河、水面上昇、洪水に襲われる海岸、長引く干ばつなどがそれだ。
慈善事業による井戸で手を洗う子どもたち
提供:Scott Harrison/charity: water
国連によれば、2025年には18億人が水不足の状態で暮らすようになり、灌漑(かんがい)の必要性は15%も上昇する。これらの問題を解決する特効薬は存在しないが、テクノロジはその行く末を変える手助けをすることができるし、分野によっては、すでにそれは始まっている。以下では、そのさまざまな形を紹介する。
1.水問題に取り組む新興企業の増加
干ばつや水不足、気候温暖化などの懸念が強まっていることもあり、水関連技術への関心は高まっている。サンフランシスコの新興企業であり、アクセラレータであるImagine H2Oは、水に関わるイノベーションを組織化して促進し、テクノロジを使ってこれらの問題に対する意識を高め、水に関わる大きな問題を解決しようとしている。非営利組織であるImagine H2Oの活動は、基金や大企業からの出資で支えられており、同組織は最近、水に関する新たな有力プロジェクトを募集するコンペを行った。Coca Colaなどの大企業も、節水やリサイクルに興味を示している。安くて効率的な水ろ過フィルタや浄水器を手がけるハードウェア系の新興企業も数多く出てきている。
2.ナノテクノロジの浄水への応用
2013年、インド工科大学の研究者が、1つ16ドルのナノ粒子水ろ過システムを開発した。安価なろ過システムは過去にも作られているが、鉛やヒ素などの化学成分を取り除くことができるものは初めてだ。鉄やヒ素を捕えるナノ粒子が放つイオンが、この化学的フィルタを構成している。この浄水器は汚染物質をブロックする数枚のメンブレンフィルタを備えている。
3.灌漑コントローラ
灌漑コントローラのWaterSense認証は、EPAが作ったものだ。これは家庭用スプリンクラーなどの灌漑システムのサーモスタットとして機能するコントローラの認証プロセスを指す。EPAはこれにより、平均的な家庭で年間8800ガロン(約3万3000リットル)を節約できるとしている。WaterSenseのコントローラは、標準的なクロックタイマーを使う代わりに、その地域の天候や地形的条件からどれだけの水が必要かを割り出し、植物の必要性に合った散水をスケジュールする。コントローラの認証は個別に行われる。
WaterSenseの認証を初めて受けたのはCyber Rainだ。この企業は建設業者、デベロッパー、企業、家庭向けに灌漑ソリューションを提供している。このソリューションは自動スプリンクラーシステムで使用でき、無線通信でコントローラーに情報を送信している。ニーズに合わせてスケジュールをカスタマイズすれば、コントローラがバックグラウンドで動作する。