中国ビジネス四方山話

中国での現地社員教育--日本人による南京富士通の社内教育を見てきた

山谷剛史 2014年08月12日 06時00分

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 中国の日系オフショア企業における社員教育はどんな感じなのだろう。大学を卒業したばかりのフレッシュマンに、いかに中国と異なる日本の企業文化を教え、本社と意思疎通できるようになるのか。南京にある富士通南大軟件技術有限公司(略称:富士通南大、FNST)の社員教育現場を見てきた。

 富士通南大はその名の通り、富士通の関連企業ではあるが、南大とは南京大学のことである。両社が出資した企業で、同社の中国におけるミドルウェア開発やOS基盤開発などを行っている。現在南京では、シリコンバレーになぞらえて、中国唯一のソフトウェアバレー(軟件谷)を名乗り、「ソフトウェアロード(軟件大道)」という道や地下鉄駅を作るなど、ソフトウェア産業に力を入れていて、その地域に何もなかったころから同社はソフトウェアバレーで居を構えている。南大の名がついてあることもあり、地頭の非常によい大学の卒業生が入社し、日本語が非常に堪能な人材や、Red Hat認証のスペシャリストを多く抱える。

 優秀な大学生の誰もが、今まで生活してきた文化と異なる文化の差分を容易に理解できるわけではない。そこで富士通南大は、レクリエーションルームなど気分転換の場所を設けたほか、日本の文化を理解してもらうべく、「南京にこれ以上の蔵書数はない」というほど日本語図書を充実させた図書室を設けた。日本人が日本を理解するための気軽に読める本から小説までが、いくつもの棚を占める。

 またオフショア開発者向け社内教育のスペシャリストを日本から呼び社員教育している。担当する日本人は、日本のほか、中国・ベトナム・フィリピン・ミャンマーでもオフショア開発に特化したコンサルティングを行うオフショア大學の幸地司氏だ。幸地氏の講座やコンサルティングでは、コーディングの作法には触れず、主に「外国人SEに日本品質の意識とやり方を叩き込むこと」「対日コミュニケーション技法の伝授」「純粋な論理思考と問題解決の事例研究」が主体だ。日本企業が望む「日本品質」「日本的なプロセス」「根本原因分析」「細かすぎるドキュメント作成」をできるようにし、また「日本企業とのコミュニケーションを円滑に実現することによるオーバーヘッド削減」を叩き込むという。

 筆者が参観した授業は、社会人2年生に送る、帰納法と演繹法に加えMECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)を学ぶ「論理思考」の授業だ。幸地氏いわく「彼らはテストの勉強はできるけれど、論理的思考は苦手で、論理的思考をバカにする若い人間は多い。でもこれがものすごく大事」という。ぞろぞろと30人ばかりの新入社員が時間になり入ってくる。授業が始まると最初は皆集中しているが、時間の経過とともに最後列に座る社員がうつらうつらとなったり、スマホでチャットをしたりしだす。「2年生ではだれるのはいますが、1年生では皆無」だと幸地氏。「基本的には注意せずに「これを知らんと、富士通では給料上がらんよ」とか、「中国と日本の政府が喧嘩する理由は・・」とかいった話題で気を引きます」

 授業の中でも、実際受講者の反応がよく、受講者から様々な意見があがる話題は、「『中国人と欧米人は似ている。どちらも個人主義。だから(中国人も)仕事とプライベートはわけなければいけない』という思考のおかしいところはどこか?」といった例題など、中国の国際的ステータスなどの、中国のアイデンティティに絡むものばかり。「『イタリアン、西洋料理、中華、四川料理、寿司』という分類は正しいか?」という幸地氏の問いかけがあった。「イタリアンは西洋料理の下、四川料理は中華の下、寿司も中国のモノ」という回答があったのち、それの正否で受講者同士が論議しだし、賑やかに。

 幸地氏はいう。「『隠れた前提』も教えますが、『隠れた前提』での問題は日本人と中国人の間でしばしば出ます。お互い論理的に話していても結論にいかないのです。そのために日本の企業文化についてもレッスンを設けているわけです」

山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター
2002年より中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、アセアンのITや消費トレンドをIT系メディア・経済系メディア・トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に「日本人が知らない中国ネットトレンド2014 」「新しい中国人 ネットで団結する若者たち 」など。

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