「10年前にテープの役割は終わったと言われたが、新技術と市場価値が生まれたことでテープが復権している」――。
日本IBMは8月19日、テープストレージの開発戦略などを説明する会見を開催。その中で、日本IBMの佐々木昭光氏(研究開発 システム・テクノロジー開発製造 ストレージ・システムズ開発担当)はこう述べて、同社がテープに注力し続ける背景を語った。
日本IBM システム製品事業本部 ストレージセールス事業部 ストレージ・ソリューション・エバンジェリスト 佐野正和氏
コストの安さなどからデータ保存用にテープを再評価する機運がユーザー企業の中で高まっている。日本IBM システム製品事業本部 ストレージセールス事業部 ストレージ・ソリューション・エバンジェリストの佐野正和氏は「顧客によっては即時保存用にはフラッシュ、長期保存用にテープと、ハードディスクを利用しない使い方も生まれている」と説明した。
フラッシュとテープの「FLAPE」
IBMではテープが復権する前から、新しいテープの開発を続けてきた。米国と日本で開発が進められている。
「品質にこだわる日本がファームウェア開発に適していること、メディアが日本のメーカーから提供されていることなどが理由となり、日本が開発拠点として選ばれた」(佐々木氏)
日本IBM 研究開発 システム・テクノロジー開発製造 ストレージ・システムズ開発担当 佐々木昭光氏
現在は、標準規格「LTO」とIBMのメインフレーム用に開発されている2つの製品がある。「2つのプロダクトファミリー間でフィードバックできることが大きな強みとなっている」(佐々木氏)
テープが有望とされる背景として、現在でも新技術が開発され、高速化、大容量化が進行中であることが挙げられる。IBMでは5月に富士フイルムなどと協業し、磁気テープの記録密度で記録を更新した。1平方インチあたり859億ビットの面記録密度を実証し、LTOテープカートリッジに154Tバイトの非圧縮データを格納できるようになる。
こうした技術的な奥行きとともに、テープの評価を上げた要因となっているのが「LTFS(Linear Tape File System)」だ。テープにファイルシステムの概念を導入し、ドラッグ&ドロップのような操作も可能となった。
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LTFSは「Elastic Storage」でも活用され、IBMが開発する分散共有ファイルシステム「General Parallel File System(GPFS)」と連動してディスクのデータをテープに自動移行したり、利用頻度が低いデータをよりコストが低いテープに移動したりして、ストレージコストを抑えることにつながる。
「現在の主流となっているフラッシュ、ハードディスク、テープの混在環境から、フラッシュとテープでデータを管理する“FLASH+TAPE=FLAPE”で、という声も出てきている」(佐野氏)
テープ利用者のすそ野を広げることにつながる製品として、USB対応のLTOドライブ「IBM TS2250/TS2260」を7月29日に発売した。WindowsやMac、Linuxで動作する。ノートPCに接続して利用できる。
活用例としても、PCのデータのバックアップ、サーバのバックアップ、チームでのデータ保存用、医療や映像、製品開発、研究データなど分野での保存と交換用、地方事業所や協力企業とのデータ交換用など複数の活用例が生まれているという。
日本IBMは「テープ需要はまだ拡大する」(佐野氏)とさらなる活用拡大に意欲を見せている。
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