ITシステム部門の立場から、テクノロジの進化が現代のマーケティングに与えている影響と、その具体的なシステムとして「マーケティングオートメーション」を理解しておくことを趣旨としている本連載。前回は、マーケティングに訪れているデジタル化とはどういうことなのかを背景も含めて整理しました。連載2回目となる今回は、ずばりマーケティングオートメーションシステムとは何なのかを説明したいと思います。
Steven Spielberg監督Tom Cruise主演で2002年に公開された映画『マイノリティー・リポート』で、街頭に設置されたデジタルサイネージが、広告の前を通過する人の網膜を読み取ることで個人を識別し、過去の購買履歴を元に話しかけてくるといったシーンが登場します。
例えばアパレルショップの広告が「こんにちは、先日お買い上げいただいたシャツを着てくださっているのですね! ありがとうございます。とてもお似合いです。着心地はいかがでしょうか? 今日のコーディネートも素敵ですが、そのシャツによく合うジャケットの新作が入荷しました」と語りかけてくるといった具合です。現在のマーケティングオートメーションシステムはそこまでたどり着いてはいませんが、目指している方向性は、良くも悪くも、そんな世界です。
現時点では、オートメーションといってもベルトコンベアーで運ばれるかのように、マーケティング施策が自動的に企画され実行され最適化されるようなことはありません。同じくオートメーションと銘打つシステムとしてなじみ深い「SFA」によって、営業活動が”自動化”されるわけではないのと同じです。
マーケティングオートメーションとは、マーケティング施策でよく使う機能が統合されたパッケージソフトウェアのことだと理解しておけばいいでしょう。ほとんどのシステムはクラウド型で提供されており、マーケティングクラウドとの呼称を付けている事業者が多いのも特徴です。
みなさまの会社のマーケティング部門ではどのようなITツールを使っているでしょうか。IT部門で管理や把握をしているかどうかは別として、次のようなものを使っているところが多いと思います。顧客関係管理(CRM)や営業支援(SFA)、メール配信、ウェブサイト用コンテンツ管理(CMS)、ウェブアクセス解析。これらに加えて、ソーシャルメディア、EC、広告管理などの関連ツールを活用している企業もあるでしょう。マーケティングオートメーションシステムは、これらバラバラのツールが一元化されているものと表現することもできます。
マーケティングはその目的を達成するために、「施策の対象を定めること」「定めた相手に対して的確なコミュニケーションを計画すること」「計画を確実に遂行すること」「実施結果をレビューし改善につなげること」をそれぞれ最適化していくことが求められます。
これらの精度を高めることがマーケティングオートメーションに限らずマーケティングに関するシステムの使命です。これを実現するために現時点でマーケティングオートメーションシステムが持つ機能は、提供している各社で多少違いはありますが、主に以下の7つに整理できます。