各企業の超節税策は、現行制度の隙間をついたものであるため、それ自体は合法行為(違法行為として取り締まることは難しい)。また各国の政府がどれくらいの法人税率を設定するかもそれぞれの裁量で決められること(国家の主権に関わる問題だろう)だから、表だってとやかく言っても埒が明かない。ただし、一部の企業だけを特別扱いしたとなると話は別で、その場合はEUの法律に違反したと主張できる。欧州委員会は「うまいところを着いてきた」などと勝手に関心もしてしまうが、大金がかかっている問題から当然のことかもしれない。
なお、今後の展開については、Appleの場合、アイルランド政府との取引に関して最大2億ドル程度の税金を過去に遡って課されることもあり得るとの専門家の見方がWSJ記事(9月30日付)に紹介されている。Appleの売上規模(2013年度に全世界で合わせて1710億ドル)を考えると「雀の涙」「形だけのもの」という感じは否めない。
アイルランドでは「段階的なフェーズアウト」か
アイルランド政府による税制変更に関する経緯--なぜダブルアイリッシュの手法などを禁じることにしたかなど――などについて、具体的なところはよく分からない(ただし、同政府に圧力がかかっていたことは何度か見聞きした覚えもある)。また、具体的な変更の内容や実施のタイミングについても、正式な発表待ちとなっているようだ。
WSJ(10月13付)記事で目を引くのは、ダブルアイリッシュなどの段階的なフェーズアウトについてで、アイルランド政府が3~7年くらいかけて徐々にそうした抜け穴をふさいでいくのではないかといった関係者の観測が紹介されている。またそうしたスケジュール感であれば、OECD(経済開発協力機構)が先月一部を発表したこの関連の勧告(最終部分の発表は来年の予定)との兼ね合いもいい、などとも書かれている。
もう1つ目を引くのは、変更によって影響を受けそうな企業各社(その大半は米国の多国籍企業)がすでに変更実施を想定して対応策を練っている、というところ。その結果次第では海外法人の閉鎖や、知財管理用子会社の登記先変更なども充分あり得るという。
大きなお金の流れが変わるタイミングが少しずつ近づいている、ということかもしれない。