エンタープライズトレンドの読み方

昆虫食とシェアリングエコノミー--持続可能な社会のあり方

飯田哲夫 (電通国際情報サービス) 2014年10月21日 07時00分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷

虫を食べる社会

 かつて奄美大島の近くにある宝島という島へ、米だけを持ってキャンプに行ったことがある。米以外の食料は、魚を釣ったり、島に自生するアダンという木の果実をもいで食べたりした。それだけでは足りないので、バッタを捕まえて炒って食べるのだ。塩を振ると小エビのような味わいでなかなかうまいのだが、炒り方が足りないと、口の中で内臓がじゅわっと弾けてオェーとなる。

 The Economist誌によれば、この昆虫食というのが、人口増と食糧難に直面する世界にとって、極めて有望なプロテイン源になるという。なぜなら、昆虫は栄養価が高く(プロテイン含有量は牛肉の3倍)、かつ育てるのが簡単で、しかも二酸化炭素の排出量が少ない。現在も世界で20億人ほどが昆虫を食べる習慣を持っているということであるが、最近では健康やサステナビリティという観点から、欧米のレストランでも昆虫を使った料理が人気を博しつつあるのだとか。

 しかしながら、昆虫はこれまで主要な食料として、当局による調査や規制がしっかりと行われて来なかった領域であるため、何を食べて良いのか、どういう基準を課せば安全が担保されるのかなどまだまだ未整備の部分が多い。ようやく今年になって、FAO(国連食糧農業機関)がその調査に乗り出したところである。

モノを買わない社会

 そして、もう一つこれからの社会に影響を与える動きについての議論がイギリスで本格化した。このコラムでも何回か取り上げてきたシェアリングエコノミーである。英政府は、シェアリングエコノミーが経済に与える影響が大きいとの予測に基づき、同国がシェアリングエコノミーに関し、世界の中心的な役割を担うべきだとしている。

 英政府は、今年の9月にシェアリングエコノミーに関する調査プロジェクトを立ち上げた。その趣意書の中で、自家用車や休暇目的での宿泊施設の利用といった領域においては、2025年までにシェアリングエコノミーのシェアが50%になるだろうと予測されている。つまり、そのころまでには2人に1人は、自家用車は持たずに他の人や事業者が提供する車を借り、休暇で旅行をするときもホテルではなく、個人から宿泊施設の提供を受けるであろうと。

 かなり大胆な見通しであるが、英政府はこうした動きに先立って、その利用者や既存事業者に対するインパクトを分析し、必要な規制を整備しておきたいという意向があるようだ。面白いのは、その趣意書の中で、“Business and Enterprise”担当大臣であるMatthew Hancock氏が次のように述べていることだ(訳は筆者)。

There's huge economic potential for the sharing economy and I want to make sure that the UK is front and centre of that, competing with San Francisco to be the home of these young tech start-ups.

シェアリングエコノミーの経済的な潜在力は極めて大きい。故に、イギリスがその先頭に立ち、さらにはその中心的な役割を果たせるようにしたい。こうした領域の新興のテクノロジスタートアップがサンフランシスコではなくイギリスを選ぶようにしたいのだ。

 一方、この英政府のプロジェクトに関し、中道左派の英The Guardian紙は、調査がビジネス的なインパクトの分析に偏っており、シェアリングエコノミーの中でサービスの提供者になるであろう労働者の権利に関する議論が欠けていると指摘する。なるほど、調査趣意書を見ると、確かに英政府は、シェアリングエコノミーを推進することに目線が行き過ぎて、サービスの提供者を守るという観点が抜けているようである。

サステナブルな社会

 話は昆虫に戻るが、既にタイには2万ものコオロギ畑があるのだという。The Economist誌は、昆虫もそのまま食べるのは厳しいかもしれないが、粉末にしてプロテインバーのような形にすれば、健康で環境に優しい食品として十分に受け入れられるのではないかと予測している。

 イギリスのシェアリングエコノミーに関する調査については、The Guardian紙が指摘するようにビジネスに関する議論が多い。しかし、シェアリングエコノミーのもう一つの側面であるサステナビリティに関するポジティブなインパクトについても盛り込んだら良いのではないかと、バッタの味を思い出しながら感じた次第である。

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連ホワイトペーパー

SpecialPR

連載

CIO
月刊 Windows 10移行の心・技・体
ITアナリストが知る日本企業の「ITの盲点」
シェアリングエコノミーの衝撃
デジタル“失敗学”
コンサルティング現場のカラクリ
Rethink Internet:インターネット再考
インシデントをもたらすヒューマンエラー
トランザクションの今昔物語
エリック松永のデジタルIQ道場
研究現場から見たAI
Fintechの正体
米ZDNet編集長Larryの独り言
大木豊成「仕事で使うアップルのトリセツ」
山本雅史「ハードから読み解くITトレンド放談」
田中克己「展望2020年のIT企業」
松岡功「一言もの申す」
松岡功「今週の明言」
内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」
林 雅之「デジタル未来からの手紙」
谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」
大河原克行「エンプラ徒然」
内製化とユーザー体験の関係
「プロジェクトマネジメント」の解き方
ITは「ひみつ道具」の夢を見る
セキュリティ
セキュリティインシデント対応の現場
エンドポイントセキュリティの4つの「基礎」
企業セキュリティの歩き方
サイバーセキュリティ未来考
ネットワークセキュリティの要諦
セキュリティの論点
スペシャル
エンタープライズAIの隆盛
インシュアテックで変わる保険業界
顧客は勝手に育たない--MAツール導入の心得
「ひとり情シス」の本当のところ
ざっくり解決!SNS担当者お悩み相談室
生産性向上に効くビジネスITツール最前線
ざっくりわかるSNSマーケティング入門
課題解決のためのUI/UX
誰もが開発者になる時代 ~業務システム開発の現場を行く~
「Windows 10」法人導入の手引き
ソフトウェア開発パラダイムの進化
エンタープライズトレンド
10の事情
座談会@ZDNet
Dr.津田のクラウドトップガン対談
Gartner Symposium
IBM World of Watson
de:code
Sapphire Now
VMworld
Microsoft WPC
Microsoft Connect()
HPE Discover
Oracle OpenWorld
Dell Technologies World
AWS re:Invent
AWS Summit
PTC LiveWorx
吉田行男「より賢く活用するためのOSS最新動向」
古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」
中国ビジネス四方山話
ベトナムでビジネス
日本株展望
企業決算
このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]