伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は11月13日、データセンター設備仕様をオープン化するプロジェクト「Open Compute Project」に基づいたITインフラ「Open Cloud Package」の提供を2015年1月から開始すると発表した。最小構成価格は1500万円から。3年間で50社への提供を目指す。
Open Compute Projectは、Facebookをはじめとしたユーザー企業が中心となって、データセンターに最適なハードウェア構成を開発しようというプロジェクト。2011年にスタートし、現在、150社を超える企業がプロジェクトに参加している。CTCは1月、Open Compute Projectとソリューションプロバイダー契約を結び、国内初の認定パートナーになった。
今回発表したOpen Cloud Packageは、Open Compute Projectの仕様に沿ったハードウェアの上でIaaS環境構築管理ソフトウェア(クラウドOSとも言われる)の「OpenStack」などのオープンソースソフトウェア(OSS)を組み合わせ、ITインフラとして提供する。
具体的には、サーバとネットワークでOpen Compute Project仕様に沿った機器を使い、OpenStack上でハイパーバイザ「KVM」やコンテナ管理ツール「Docker」、ベアメタル(物理サーバ)、パブリッククラウドを統合管理できるようにする。
ストレージにはソフトウェアで定義するスケールアウト型の「ceph」を使うほか、ハードウェアやミドルウェアの監視には「Zabbix」、ログの監視や分析には「Elasticsearch」などを、コード管理には「GitHub」を、テスト自動化には「Serverspec」や「Jenkins」を、構成管理には「Chef」を、ベアメタルへのデプロイには「Cobbler」などのOSSを活用する。
インフラ全体をAPIで簡単に管理できるようにするためのスクリプティング環境やウェブUIも提供する。OpenStackからクラウドアプリケーションを管理できるようにするCTCのコントローラ「RACK」も活用するという。
Open Cloud Packageのアーキテクチャ
CTC ITインフラ技術推進第1部 部長代行 小泉利治氏
CTCのITインフラ技術推進第1部 部長代行の小泉利治氏はOpen Cloud Packageの「大きな特徴として、迅速で柔軟なシステム提供が可能なこと、無限の拡張性を持ちコストを削減できること、先端技術採用リスクを軽減できることの3つがある」と主張した。
“迅速で柔軟なシステム”については、OSSを組み合わせて開発やテスト、運用を自動化したり、使用環境としてさまざまな環境を選択できたりすることを指している。使用環境としては、仮想環境のほか、ベアメタル環境、Doceker、パブリッククラウド環境をオンプレミスなどで構築できるとしている(Dockerとパブリッククラウドは2015年3月リリース予定)。
“無限の拡張性とコスト削減”は、OSSを利用することで特定ベンダーに依存しないスケールアウト型システムが構築できること、Open Compurte Project仕様に沿ったハードウェアを採用することで調達や運用のコストを削減できるという。
“先端技術採用リスクの軽減”については、ソリューションのすべてのソースコードをオープン化するほか、CTCが事前検証済みの製品として出荷することで安心して利用できるようにするとした。
会見では、開発中の製品の実演が披露された。Open Compurte Projectではサーバやネットワーク機器がモジュール化されており、データセンター管理者は、モジュールをラックに差し込むだけで、構成や設定を自動的に設定できる。
たとえば、ベアメタル環境をユーザーに提供する際も、新しいモジュールをラックに差し込むと自動的にLiveCDでのインストールプロセスが実行され、ウェブUI上で未使用リソースとして管理できるようになる。BIOSやファームウェアのバージョンなども確認可能だ。ウェブUIからは、仮想マシン、ベアメタルサーバ、ネットワーク、ストレージプールの状況などを統合管理できるようになっている。
「ハードウェアの販売、システム構築、保守サポート、運用支援サービスをCTCが提供する。ビッグデータ分析やソーシャルやモバイルビジネスの立ち上げ、柔軟なシステム構成の変更となど、顧客の環境にあわせたシステムを提供していく」(小泉氏)
Open Compute Project Foundation チャネル担当バイスプレジデント Steve Helvie氏
会見には、Open Compute Project Foundationのチャネル担当バイスプレジデントのSteve Helvie氏が参加。Open Compute Projectのユーザー事例として、FacebookやMicrosoft、Rackspaceのケースを紹介した。
Facebookのデータセンターでは、Open Compute Project仕様の機器を利用することで、データセンター管理者1人が2万台のサーバを管理できるようになったという。消費電力を38%削減、運用コストを24%削減し、電力使用効率(PUE)は1.07を達成している。
2013年からOpen Compute Projectに参加するMicrosoftは、運用コストを40%も削減し、電力使用効率を15%向上させた。サービスのデリバリタイムは半減したという。
Rackspaceは、Open Compute Project機器とOpenStackを使って“上から下までOSS”でデータセンターを構築しているケースだという。Helvie氏は「CTCのケースは、このRackspaceと同じ非常に先進的な取り組みだ」と評した。Helvie氏は、次のように話し、日本でもOpen Compute Projectが進んでいることを強調した。
「2014年は、日本のデータセンターにとって、実りのある年だった。Equinix、Degital Reality、VMware、Microsoftが相次いでデータセンターを開設した。その背景にもOpen Compute Projectの取り組みがある。東京には、CTCによるOpen Compute Projectの検証ラボがある。世界でもまだ少ないので、ぜひ利用していただきたい」(Helvie氏)
Open Compute Project参加企業。パナソニックやネットワンも参加している