(3)空調の電源制御時のリスクシミュレーション
今後、データセンターで消費する電力量の抑制要求が強まると、低消費電力タイプのIT機器や設備への入れ替えだけでなく、電源スイッチのオン/オフをこまめに切り替え、電力の供給を元から断つニーズが出てくることが想定される。
そのときに注意しなければならない点の1つは、空調の電源を落とした際のリスクだ。室内のエアフローへの影響を考慮しないで空調を停止したら、短時間のうちに部分的に高温のエリアが生まれ、システムの可用性に影響をおよぼしかねない。
そういった事態に陥らないようにする目的で、DCIMシステムは空調の電源のオン/オフに伴う室温の変化を、画面上でシミュレーションする機能を備えている。IT部門の担当者は可用性を脅かすリスクを最小限に抑えつつ、停止によって得られる省エネ効果が最も高くなる空調の電源をあらかじめ把握し、いざというタイミングに備えられる。
経営への貢献度アップにつながる
以上、これまで3回にわたって既存のデータセンターが抱えるマネジメントの課題と、その解決策としてのライフサイクルマネジメント、実践手段であるDCIMについてみてきた。
業務システムの分野では、運用段階で得られるさまざま情報をシステム開発に生かさない手はないとして「DevOps」が脚光を浴びているが、データセンターも同じである。運用段階で得られる詳細情報の利用価値は高い。
可視化に課題を感じているIT部門の担当者は、データセンターのIT機器や設備が発生させ続けているデータをDCIMシステムに取り込み、一段ずつマネジメントのレベルを高めていっていただきたい。そうすることが結果的に自らの日常的な作業の負担を軽くすると同時に、データセンターの可用性や電力使用効率、コスト効率、環境性能を高め、IT部門による経営への貢献度アップにつながるはずだ。