本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、富士通の花田吉彦 執行役員常務と、日本オラクルの多田直哉 執行役員の発言を紹介する。
「オールジャパン体制で日本の製造業復権に取り組みたい」 (富士通 花田吉彦 執行役員常務)
富士通 花田吉彦 執行役員常務
富士通が先ごろ、ものづくりに関する生産活動などのあらゆるデータがつながり、かつ高次元で人とロボットなどの機械が協調生産する「次世代ものづくりICT」の環境構築実現に向けた取り組みを開始すると発表した。同社の執行役員常務 産業・流通営業グループ長である花田氏の冒頭の発言は、その発表会見で、さまざまな業種の企業との協業によるオールジャパン体制で挑むその取り組みへの意気込みを語ったものである。
新たな取り組みの骨子は、部品のばらつきに柔軟に対応する自律制御や工程変更に迅速に対応する制御プログラムを自動生成するロボットのシステム開発、IoT(Internet of Things)を活用した工場設備の監視、部品特性や湿度などさまざまな要因による製造品質の予測などを社内で実践し、これらをリファレンスモデルとした新たなソリューションを10月から順次提供していくというものだ。
こうした取り組みにより、日本の製造業のものづくりにおいてICT化、自動化、ネットワーク化を進め、ノウハウの継承や適正品質の実現、開発・製造リードタイムの短縮などを通じて、新しい価値の創出を目指すとともに、国内のものづくりに関わる多くの企業と連携し、グローバルな競争に勝ち抜くものづくりの実現をICTで支援していくとしている。
新たな取り組みの詳細な内容については関連記事を参照いただくとして、ここでは花田氏の発言に注目したい。
同氏は会見で「富士通はこれまでも、ものづくりICTにおいてお客様へのさまざまな支援を行ってきた。ここにきて製造業の国内回帰の流れが鮮明になってきており、これからはさらに当社の技術を駆使して、生産現場の自動化の推進をはじめとした次世代ものづくりに尽力していきたい」と語り、「それを実現するのは、富士通1社では限界がある。多くの関連企業とともにオールジャパン体制を組んで挑みたい」と強調した。
これは非常に大きなスケールの話である。ただ、この分野については、これまで相当数のさまざまな業種の生産現場を取材してきた筆者にも課題として印象強い点がある。
それは、ロボットのような自動化機械を含めた現場の生産管理システムと、基幹業務システムがうまく連携しているケースが少ないということだ。製造業にとって長年の課題ではあるが、どの企業もそれぞれのシステムを担っている組織部門が違うこともあり、全体最適とはなかなかいかないようだ。