EMVが日本で普及しない理由
カード決済、また非接触決済の安全性を担うための技術的な支柱として「EMV」がある。
EMVは、EuroPay、MaterCard International、Visa Internationalが策定した、ICカードの統一規格で、金融分野向けのICカードと、端末の仕様を規定する。ICカードと端末のインターフェース、ICカードと端末間の処理フローなどを定義しており、外部端子付ICカードの物理的特性や、機能、各コマンドなどを規定した国際規格「ISO/IEC7816」に準拠している。EMVは、これら3社の頭文字を意味する。
EMVは、カード決済の安全性強化に有効とされている。しかしながら、EMVは、欧州地域では普及しているものの、米国や日本では対応が遅れている。日本と米国では、EMV導入に際し、店頭の読み取り、POS(販売時点情報管理)システムや決済端末の対応が追いつかず、導入の費用対効果が不明確であるため、対応店舗が少ない。
「EMVはカードの不正使用を防ぐことが大きな利点であり、世界標準だということができる。導入計画は米国でもかなり進んできた。欧州のほか、中国でも進展している。ある意味、不可欠なものであると考えている。というのも、日本のカード会員は海外渡航する際、EMV対応のカードが必要になるはずだ。米国でも同様に、米国内のカード会社の会員が欧州に出かけたとき、事実上、カードが使えないというのは好ましいことではない。日本は例外かもしれないのだが、EMVを導入しない国は、いずれ、不正使用が増加することにもなりかねない」(同)
「各国の事情をみると、チップカードなしでは、生活のさまざまな局面で利便性が損なわれるのではないだろうか」と、Anderson氏は指摘する。
一例を挙げれば、ロンドンで用いられているバスや地下鉄、電車などを利用できるプリペイド型の電子カードのオイスターカード(Oyster card)はチップカードがなければ買うことはできない。また、先日バルセロナに行ったのだが、自動車をガレージから出すときに、チップカードが必要だったことがあった。やはりEMV対応のカードが必要であるという状況が、国際的に広がっている」(同)と同社では考えている。
経済産業省は、東京五輪に向け、「クレジットカード決済の健全な発展に向けた研究会」を設置した。来日する外国人に対してグローバルに順じた、EMV対応のカード決済、つまり100%のIC化を目指すとした。業界団体もこれにならい、2015年からは本格的なEMV IC化へ舵をきることが予想される。日本のクレジットカードがEMVに対応する可能性は高い。