4月10日に迫ったApple Watchの予約受付開始を前に、例によって米国のいくつかの媒体で同製品についての先行レビュー記事がいっせいに公開されていた(7日深夜から8日の早朝にかけてのこと)。
中にはThe VergeやRe/codeのそれのように、並々ならぬ気合いが感じられるものも交じっているが、今回はそうしたレビュー記事(いずれも1週間程度の試用を経て書かれたもの)の中から目に付いた指摘などを少し紹介する。
コミュニケーションの「親密さがちがう」
16歳の自分が学校にいる姿を想像してみよう。授業中に、ひどく好きになった相手のことを思っている自分。相手のことを考えずにはいられない自分。相手の方も自分に気があるのではないかという思いが浮かぶが、相手の気持ちを確かめる術(すべ)はない。相手に直接訊ねる勇気はない。そんなことをして、もし「別に好きじゃない」と言われたらどうしよう……。そう思うと、直接話すのも気後れしてしまう。
だが、幸いなことに相手もApple Watchをしている。そこで、相手にちょっとした落書きを送ってみることにする。しばらく待ったが、返事はこない。ちきしょう、自分はどうしてこうも間抜けなんだ…そう思った瞬間、相手から返事があったことを知らせる感触が手首にあった。
画面を見ると手書きのスマイルマークが。さらに何度か画面をタップしてみると、向こうも返事を返してきた。やった。今度は自分の鼓動を送ってみることにする。ドキドキして高鳴っている鼓動を送る。すると、相手からも鼓動が返ってきた。
甚だ拙い訳文で恐縮だが、描かれている場面の様子はそれでもなんとか伝わるかと思う。なんともナイーブなこの一節が出ているのは、Daring FireballのJohn Gruberが書いたレビュー記事。
Gruberは今回、6000語にもなる長いレビュー記事の終わりのほうで、Apple Watchに搭載される「Taptic Engine」のポテンシャルを伝えるために、この一節を記している。
Appleサイトにある「Taptic Engine」の項には、「アラートや通知を受け取ったり、ディスプレイを押すといった操作をするたびに、あなたの手首を軽く叩きます。」「例えば、Apple Watchを軽くタップするだけで誰かの注意をひくことができます。あなたの心臓の鼓動といった、かなり個人的なことさえ伝えられます。」といった説明があるが、Gruberは「こういう言葉も文字や記号も使わないコミュニケーション、身体を介したコミュニケーションをしかも離れた場所にいる相手とできる。これはとても大きなものに化ける可能性を秘めている」などと記している。
さらに、他の種類のコミュニケーションと同じく、このデジタルタッチ(Digital touch)というコミュニケーションも相手がいなくては成立しないから、この機能が引き金となっていわゆる「ネットワーク効果」が働くかもしれないなどとも指摘している。
より正確に記すと、「自分が大切に思う人間も身に付けていて初めて、Apple Watchのもっとも革新的な機能の真価がわかる」と書いている。
なお、この心臓の鼓動もあるいは絵文字や落書きのような他のメッセージも、Snapchatのように開封後は跡形もなく消えてしまうらしい(The Verge記事中の指摘)。家族や恋人以外に親密な相手がいるユーザーには打って付けの機能かもしれない。