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イノベーションに計画はいらない--MITメディアラボ所長 伊藤穣一氏

山田竜司 (編集部)

2015-06-08 07:00

 センサデータを使って放射線の強弱をウェブ上に地図化する世界的なプロジェクト「Safecast」のカンファレンスが先ごろ開催された。プロジェクトに参画している参画している米マサチューセッツ工科大学(MIT)Media Lab所長の伊藤穰一氏などが、市民が主体となり科学的なプロジェクトを推進する「市民科学」のあり方などを議論した。

 Safecastは2011年3月11日の東日本大震災による原発事故後、市民が自ら放射性物質の数値を測定、共有する取り組みとして1週間で立ち上がったプロジェクトだ。政府が定めた観測地点以外にある、自分たちの生活圏の線量を測定したい市民らが参加している。


MITメディアラボ 所長 伊藤穰一氏

 プロジェクトでは独自に開発した「bGeigie」という放射線量計を自動車に装着し、GPSデータとともに記録、公開している。これにより、ウェブ上での放射線レベルのマッピングが可能となる。集積したデータは誰でも自由に使えるよう公開しているという。

 活動はすべてボランティアによって運営されているが、伊藤氏やマネックス証券の最高技術責任者(CTO)Pieter Franken氏など多くのプロフェッショナルが当初から参画、すでに3000万超の地点を測定したという。

 放射線量を測り、ウェブ上にマッピングして公開するという取り組みには従来、専門的なハードやソフトが必要であり、コストの関係からも実施が難しかった。インターネットやオープンソースソフトの普及、センサ、3Dプリンタやマイコンボードなどの価格の下落などにより、一般でもこれらが可能になった。

 Safecastでも当初、伊藤氏を含め、放射線量計の知識がある人物はいなかったが、ネットを介してすぐに専門家同士のネットワークを構築し、独自の放射線量計を作るに至った。これは、ソーシャルメディアでのボランティア募集などの情報発信や、資金提供を呼びかけるクラウドファンディングなどの仕組みを総動員した結果とも言える。

 ネットが普及しソフトやハードの開発環境のコストが下がった今、イノベーションに至るには、大仰な計画を立案することに時間を費やす必要はない。素早く物事を進めるために方針だけを定め、メンバーの担当を決めることなく柔軟に対応することが重要であり、Safecastもこのような方針を採用したという。

 収集したセンサデータや緯度経度データをオープンに公開し、誰でも利用できるようにしたことや、ハードの設計やソフトの情報を無償で公開し、誰でもハードを作ることができるようにした点などから取り組みは広がり、2014年には国際原子力機関(IAEA)からプロジェクトを評価されるほどになった。


放射線量計「bGeigie」の最新モデル。小型化され、一般販売もされている

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