内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」

IT部門が担う役割への期待と現実

内山悟志 (ITRエグゼクティブ・アナリスト)

2015-06-17 07:30

 クラウドの台頭やデジタル化の進展によって、企業においてIT部門が担うべき役割に変革が求められています。IT部門が担うべき役割についての調査結果からは、ビジネス貢献へと積極的に打って出たいという思いと、それが簡単ではないという現実が明らかとなりました。

従来のIT業務を縮小したいという思い

 ITRが毎年実施している「IT投資動向調査」の最新版では、IT部門の担うべき役割に関する調査項目を初めて追加しました。その結果、自社のIT部門が「現在担っている役割」と、「3~5年後に担うべき役割」をそれぞれ問うた結果を集計してみると、全体的に担うべき役割が縮小、分散する傾向がみられました(図1)。


図1.IT部門の役割(現在/今後担うべき)

 このことから、既存システムの維持運用に加えて、グループやグローバルへの業務領域の拡大、セキュリティ対策やコンプライアンスへの対応、数多い開発、保守案件の遂行など実施しなければならない業務は増加する傾向にあるものの、人材は必ずしも増員されるわけではなく、抱えている業務で手一杯という状況であり、そこから何とか脱したいという意向を読み取ることができます。

 特に、現在のIT部門が担っている中心的な役割である「システムの機能やパフォーマンスの改善」「システムの安定稼働/障害対応」「セキュリティ管理」といった「従来型機能」に位置づけられる項目は、調査時点では6~7割の企業でIT部門が担っているとしていますが、3~5年後にもIT部門が担うべきだと考えている企業の割合は3~4割と大きく落ち込んでいます。

 ITをビジネスや業務で利用する以上、安定性や安全性、パフォーマンスに関わる要求水準が今後低下するとは考えにくいため、その役割自体の重要度が下がることはないと思われます。したがって、こうした「従来型機能」は中長期的にはクラウドの活用、専用性に優れた外部の事業者へのアウトソーシング、システムによる自動化などを推進していくことで社内の業務負荷を軽減したいという意向が反映されていると考えられます。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    「デジタル・フォレンジック」から始まるセキュリティ災禍論--活用したいIT業界の防災マニュアル

  2. 運用管理

    「無線LANがつながらない」という問い合わせにAIで対応、トラブル解決の切り札とは

  3. 運用管理

    Oracle DatabaseのAzure移行時におけるポイント、移行前に確認しておきたい障害対策

  4. 運用管理

    Google Chrome ブラウザ がセキュリティを強化、ゼロトラスト移行で高まるブラウザの重要性

  5. ビジネスアプリケーション

    技術進化でさらに発展するデータサイエンス/アナリティクス、最新の6大トレンドを解説

ZDNET Japan クイックポール

注目している大規模言語モデル(LLM)を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]