データスタジアムは、野球やサッカーの試合データをリアルタイムに収集し、コンテンツとして提供している会社。システムのリニューアルにも積極的で、データをビジュアライズしたコンテンツをテレビやウェブなどへ多数提供している。今回、同社の代表取締役社長である加藤善彦氏、テクノロジーマネジメント部および配信・運用サービス部の部長である岡本正弥氏に話を聞いた。
――データスタジアムはどのような企業か。
加藤氏 野球、サッカー、ラグビーを中心とする競技データを分析する事業を展開しています。分析したデータは、メディア向けに配信や販売したり、チームやスポーツ団体に提供しています。

データスタジアム 代表取締役社長 加藤善彦氏
――ビジネスを始めようと思ったきっかけは。
加藤氏 データスタジアムの前身となる会社で野球の分析を数年やっていたのですが、それをサッカーでもやってみようということで、当時イングランドのプレミアリーグで採用されていた仕組みを使ってJリーグのデータ分析を受託で始めたのがきっかけです。それがオフィシャルという形になったという流れです。
ただ、一番最初のきっかけはサッカーくじの「toto」でした。totoが始まって、予想するためのデータの市場が拡大したのです。そのニーズに応えるために、データ収集、分析を始めました。
――具体的なサービスは。
メディア向けには、最終的には視聴者やスポーツファンといったエンドユーザーに、データを活用したコンテンツでスポーツをより楽しんでいただくという観点で、さまざまな企画や開発に取り組んでいます。スポーツ団体やチーム向けには、競技の活性化やチームの強化に貢献するようなデータやコンテンツを提供したり、データを分析するシステムを提供することもあります。チームがそのチームのファンに対して、データを活用したコンテンツを提供するケースもあります。
チーム向けにはデータの提供が基本で、特に野球とサッカーが中心です。野球では日本プロ野球(NPB)のすべての球団と、サッカーではJリーグの約半数のクラブと取引実績があります。要望に応じてデータに基づいた考察や見解を提供することもありますが、あくまでもデータを提供するということに足を地に着けています。
――どのようなデータを提供しているのか。
加藤氏 例えばサッカーでは、ボールを中心にタッチしている選手の動きを記録して、どのようなプレイだったのかを1試合分ストックしています。最近はそれに加えて、JリーグとJリーグの映像に関する事業を展開するJリーグメディアプロモーション、データスタジアム3社の共同事業として、「トラッキングシステム」を導入しています。
トラッキングデータは、ヨーロッパで使われているシステムであり、専用のカメラによる映像からデータを収集し、選手の走行距離や、走行スピードなどを測る仕組みを持っています。それをこの3月からJ1のすべての試合に導入しています。データと、従来からのボールタッチベースのデータを組み合わせ、試合や選手などを読み解いていきます。また、Jリーグの公式サイトで毎節1試合、選手の動きをアニメーション化し、ピッチ全体を俯瞰で描写する「LIVEトラッキング」というサービスをやっていますが、このシステムを活用したデータの露出からアニメーションの作成まで、すべて当社内でリアルタイムにやっています。
――映像からトラッキングするとは、具体的にはどのようなことか。
加藤氏 専用のカメラとソフトウェアを使うとピッチ上のすべての選手をトラッキングできます。基本的には画像認識のシステムです。もともとは軍事用のシステムで、ミサイルの追尾システムの技術をピッチ上に応用したものだといいます。ただ、選手が重なったりすると認識が難しくなるので、適宜人の手で修正作業をしています。

「LIVEトラッキング」向けサービス