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単語は100個で十分--人工言語「トキポナ」の問題提起

飯田哲夫 (電通国際情報サービス)

2015-07-29 07:00

シンプルなコミュニケーション

 最近あったThe Bridgeの記事「嫌われ者のEメール、それでも存続し続けるのはなぜだろう?」。なぜ嫌われ者か? それは、Eメールのコミュニケーションが難しいからだ。分かってもらえるよう、丁寧に説明すればするほど、細かく書けば書くほど、相手を激昂させ、真意を伝えるには程遠い状態になる。

 一方、LINEやMessengerでは、伝える単語の数は極めて少ないが、それにちょっとスタンプや絵文字を加えると、円滑なコミュニケーションが実現できる。スタンプ9割と文字1割でも、かなり意思疎通ができるのではなかろうか。

 われわれは、言葉を使えば使うほどコミュニケーションに失敗し、言葉を減らせば減らすほどコミュニケーションに成功するのかもしれない。

123しか単語のない言語「トキポナ」

 「Toki Pona(トキポナ)」という人工言語がある。カナダ在住のSonja Elen Kisaが作り上げ、2001年にインターネットで公開した。トキポナは14の音素と123の単語しかなく、30時間で習得できるという。

 Sonjaは、トキポナを作るに際し、類似した概念は統合し、そして複雑な概念は要素に分解して、どんどんと単純化していった(Business Insider誌)。最も象徴的なのは色の表現だ。トキポナには色を表す単語が5つしかない。それは赤(loje)、青(laso)、黄(jelo)、白(walo)、黒(pimeja)、つまり三原色と白黒である。

 では、それ以外の色はどう表現するか。絵の具を混ぜるように表現するのだ。例えば、ピンクは、赤白(loje walo)というように。数字も1(wan)、2(tu)、5(luka)、たくさん(mute)しかない。

 言語は、その表現すべき世界の発展に応じて、どんどんと新しい概念を付け加えて複雑化していくが、日々のコミュニケーションを振り返れば、意外とそのくらいの方が心地よいのかもしれない。

なぜトキポナ?

 では、なぜSonjaはトキポナを作ったのだろうか? そして、なぜ、どこの国で通用するわけでもないトキポナを習得しようとしたり、メディアで取り上げたりする人がいるのか? そもそも、自分は何故トキポナに反応してしまったのだろうか?

 The Guardian誌によれば、Sonjaがトキポナを作ったのは、自分があまりに多くのことを短時間で考えようとしてしまうことに辟易し、もっと物事をシンプルに考え、そして表現できるようにしたかったからだという。

 トキポナという言語、あるいは背景にある考え方に共感を覚えるなら、きっとSonjaと同じような経験をしているということかもしれない。情報は氾濫し細分化される、多様性が前提となり社会は複雑化する、競争はグローバル化し個人も世界を相手に戦わざるを得ない、そんな社会の中でシンプルにほかの人とアイデアや感情を共有できるようになりたい、というようなことなのかもしれない。

 長々とした説明よりも、スタンプ1個で怒っているのか喜んでいるのかをまず知りたい。メッセージングアプリの多用とEメールへの嫌悪、これはトキポナへの関心と同じことなのかな。

飯田哲夫(Tetsuo Iida)

電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。1992年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。

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