ハイブリッドクラウド座談会(2)--エンタープライズ × AWSをさまざまな視点で議論 - (page 3)

怒賀新也 (編集部) 山田竜司 (編集部) 吉澤亨史

2015-09-28 07:49

オラクル 佐藤氏 AWSはどんどん発展している企業と理解していますが、そのクラウドサービスをエンタープライズで使う際には注意が必要だと思っています。エンタープライズのアプリケーションには、さまざまな特性があります。AWSが基幹向けに特化した高スペックなマシンを用意するのであれば、基幹系やエンタープライズでもいけると思います。

 また、クラウドは下から見るか上から見るか、あるいはクラウドファーストで見るのかによって、変わってきます。例えばデジタルマーケティングのためにゼロからクラウドで仕組みを作ろうとしたら、3年かかるかもしれない。そういうものは、すでにあるシステムを借りればいいと思います。気に入ったSaaSのアプリケーションを拡張したいときには、オラクルのPaaSやIaaSのプラットフォームで、上のレイヤから拡張できます。

 もう少し具体的に言えば、IAサーバで動かないものを汎用サーバで使いたいなど、ハードウェアとソフトウェアをある程度密接に連携させたものが、エンタープライズ分野で受け入れられています。そこにわれわれの存在価値があると思っています。さらに、プロセッサ上に直接ソフトウェアを埋め込む「ソフトウェアインシリコン」も、オラクルのパブリッククラウドなら利用できるのです。


マイクロソフト 各務氏 エンタープライズや基幹、ミッションクリティカルにもいろいろなレベルがあります。私はユーザー企業にいたことがあり、止まると大問題になるシステムを担当していました。プライベートクラウドで使っていたシステムは、基盤にVMwareを採用しており、99.999%というSLAを設定していました。ミッションクリティカルとは結局、SLA、セキュリティとパフォーマンス、可用性だと考えています。

 クラウドのセキュリティはもう大丈夫だと言われており、パフォーマンス面も一部の使い方を除けば十分にクラウドで実装できるようになっています。最後に残るのは可用性でして、その中でも一番問題になるのがメンテナンスです。自分の思ったときにメンテナンスできないことが、顧客が考える問題点です。

 プライベートクラウドは計画停止できます。もしも、パブリッククラウドでメンテナンスの停止時間をゼロ近いものにする、あるいは顧客が管理できるようになれば、そのときはパブリッククラウドとオンプレミスの差はほぼなくなると考えていい。マイクロソフトとしてアピールしますと、メンテナンスの時に止まらないような仕組みを、今実際に作っています。最終的に100%をパブリッククラウドに載せるのは私も難しいと思いますが、運用の自治権の比率次第で顧客のクラウドに移行する比率が変わってくると思います。

VMware 巨勢氏 AWSですが、間違いなく市場を作った企業だと思います。私もさまざまなセグメント、顧客の9割方が何らかの形でAWSユーザー、あるいは使ったことがあると聞いています。私もいちユーザーとして使ったことがあります。ユーザーの立場で考えると、新たに会社を立ち上げて、何もITがない状況ならば、おそらくAWSを採用すると思います。それほどオープンなサービスを準備していますので、固定資産を持たずして、ビジネスの土台として一定の質を持ったシステムを作れます。

 しかし、エンタープライズでは話は別だと思っています。当然、既存の資産がありますから、それもAWSに持っていくワークロードを考えると、非常に多くの作り込みをしなくてはなりません。実際にエンタープライズのミッションクリティカルなアプリケーションをAWSに持っていって、想定以上の工数がかかったという話も聞いています。それでは本末転倒です。

 つまり、クラウドを既存の資産とまったく関係のない所に作るとすれば、AWSは非常に良いオプションです。これはAWSに限らず、MicrosoftのAzureもそうですし、他のクラウド事業者、VMwareもパブリッククラウドサービス「vCloud Air」を持っていますが、そういったオプションは必ずあると思います。ただ、エンタープライズの企業が今まで培った資産を使った次の新しい仕事を作るにあたっては、やはりハードルが高いケースが多いというのが率直な感想ですね。

座談会の様子
座談会の様子

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