「2020年までに海外売り上げの比率を5割以上にする」――。データ連携ソフトなどを手がけるインフォテリアの平野洋一郎社長は創業以来の夢を実現するため、新製品を英語版から市場に投入することを決断した。
海外での開発体制を整える一方、平野社長の活動拠点も海外に移す。15年度に国際会計基準IFRSに対応する。
海外進出への3つの障壁
1998年に創業したインフォテリアは、「組織を越えたコンピューティングを実現するソフトを国内外で提供する」(平野社長)ことを目指している。だが、海外で多くの販売実績を獲得した日本のソフト会社はなかなか現れない。平野社長はその理由を「3つの壁にある」と考えている。
1つ目の壁は、製品である。欧米で流行った製品に似たものを開発しても、日本で売れたとしても、海外で通用する製品に発展させるのは難しいということ。2つ目は、経営の壁である。
「いいものを作れば売れる」というプロダクト至上主義になり、自前にこだわること。経営ビジョンを一日も早く実現するには、他社の優れた技術や製品を取り込む。「投資家と組んで、(そんな企業に)出資したりする」(平野社長)ことも必要になる。
3つ目がマーケティングの壁だ。「いいものなのに、なぜ売れないのか」と悩むものの、実は顧客に製品の特徴を伝える仕組みや仕掛けがない。それを担うマーケティング組織があっても、営業部門の傘下に組み入れられて、メディアなどへの広告宣伝が中心にする。マーケティングに必要なのは「2、3年後にどんなことが求められるのか。需要をどう掘り起こすかを考えること」。
平野社長は「3つの壁を乗り越えないと、価値を認めてもらえる製品にならない」と考えて、創業時に約27億円の資金を調達し、世界で通用する製品の企画力、開発力を備えた。3年間は売り上げを気にせずに企画、開発に取り組める経営体質にしたということ。広報を含めたマーケティング部門も独立組織にする。
だが、インフォテリアの海外売り上げ比率は3%程度にとどまっている。実はこれら3つの内なる壁に加えて、外の大きな壁があった。最も大きなのが言語の壁である。日本語と英語では、市場規模が10倍近く違うと言われている。
とはいっても、日本で売れたものが海外で爆発的に売れた事例は少ない。日本市場の要求を次々に取り入れていった日本仕様の製品は、機能が豊富すぎるなどの理由から海外で容易には受け入れられない。求められる画面のデザインも異なる。